《ヒアリング調査結果》
*ユニバーサルデザインの理念
・障害が異なると、片方には必要がない整備が必要となる場合もある。また、もっと問題となるのは、ある障害者にとっては必要な整備が、異なる障害を持つ者にとってバリアとなりうる整備である。例えば、狭い道に、点字ブロックがあると、視覚障害者は歩きやすいが、松葉杖利用者はつきにくくなってしまう。この場合、両者が使えるようにするには、手すりが有効である。さらに、手すりに、点字で「○○行き」と方向を示して頂けるとありがたい。
・ひとつの障害に対応しても、バリアフリー化を行ったとはいえない。スロープは、車いす利用者にとっては問題はないが、松葉杖利用者には問題がある場合もある。また、スロープの両方に手すりをつけることにより、右半身麻痺、左半身麻痺の両者とも利用できるようになる。
・点字ブロックは、視覚障害者に必要な設備であるが、車いす利用者にとっては走行しにくくなる。一方、手すりを設置すれば、両者に加えて健常者も使いやすくなる。同様に、文字情報は聾唖者以外にとっても、あれば便利である。ある障害のみに対応するバリアフリー化では、障害者にとって優しいまちづくりにはつながらないのではないか。健常者を含め、誰にでも使いやすい施設整備、ユニバーサルデザインの理念による施設整備がまちづくりとして望ましい。
■施設整備だけでなく「ソフトのバリアフリー化」「ハートのバリアフリー化」の推進
施設整備は、障害別に異なったバリアフリー化の推進が求められるため、規格統一は極めて困難な作業である一方で、乗務員や乗客等の介助、支援などによるソフト面のバリアフリー化は障害によらず、共通の対応が可能である。バリアフリー化の推進は、ソフトのバリアフリー化、心のバリアフリー化を中心とし、施設整備等がこれらを補完する形で推進する意識が重要と指摘されている。
《ヒアリング調査結果》
*ハード整備は障害により異なるが、ソフトは共通のバリアフリー化が可能
・ハード面の整備は、障害の種類や程度によって異なる。例えば、手すりの設置についても、車いす利用者と松葉杖利用者では設置位置が異なり、整備は難しい。このような問題に対応するためには、ソフト面での支援が重要である。船舶は、特にハード整備が難しい部分も多いと想定されるので、ソフト施策の重要性が他の交通機関以上に重要なのではないか。例えば、ソフトであれば規格統一が可能である。情報提供のあり方などのソフト面の整備も検討してほしい。
・バリアフリーはソフトが中心であり、ハードはそれを補完するものでなくてはならない。ハードを整備しても、整備の意味が理解されなければ十分に機能しない。
・船員が車いすを抱えて乗船してくれるのであれば、費用をかけてハードを整備する必要がない。
・障害に応じて、バリアフリーの対応は正反対の場合もある。ハードのみでは、バリアフリー化は達成できない。個別事業者が、それぞれの特性に応じてハード整備を進めるしかない。一方で、ソフトは共通のバリアフリー化が可能である。
*船内での乗務員の対応
・ソフト面の対応の充実する方法として、船員の方が、「何か必要なことはないですか?」と乗客に聞いてみることからはじめてはどうか。また、「こうして」と頼まれたときに答える準備をしておくことが必要である。障害者にとって利用しやすい施設は、健常者にとっても使いやすいはずである。例えば、高さの違ういすを用意したり、雨の日はすべりにくいシートを拡げるなどの取組を少しずつはじめてはどうか。