(対応施設例)
・船舶:段差のスロープ化、身障者用トイレの設置、手すりの設置、誘導・点状ブロックの設置、点字案内板の設置
*運航情報等が視覚障害者および聴覚障害者にわかりやすく提供されていること
(対応施設例)
・港湾:音声情報提供設備および視覚情報提供設備の設置
・船舶:音声情報提供設備および視覚情報提供設備の設置
(6) 船舶固有の制約条件への対応
バリアフリー化は、高齢者・身障者等が健常者と全く同様に、誰でもどこでもいつでも移動できることが理想である。しかしながら、船舶は、海上を航行する交通手段であることから、安全性確保のため、コーミングと呼ばれる段差を設けてあったり、甲板の縦方向・横方向に「そり」を持たせてあるなど、法規制によってさまざまな「バリア」の設置が義務づけられている。また、法規制を遵守した上で船全体をバリアフリー化しようとすれば、船舶を大型化しなければならなくなる。こうしたことから、船舶全体をバリアフリー化することは、法規制の面やコストの面から極めて困難と言わざるを得ない。
そこで、船舶のバリアフリー化にあたっては、高齢者・身障者の利用に適した「基準適合客席」および身障者用トイレ等のバリアフリー化対応施設を船舶の特定箇所に集中的に配置することが適当と考えられる。なお、その際の留意点として、これらの施設のレイアウトや窓の位置、内装等の工夫によって船内の他の空間との一体感を持たせ、高齢者・身障者等が安心してくつろげる空間となるように配慮する必要がある。
また、新設の船舶においては、バリアフリー化への対応が船舶全体でなく特定の箇所であるにせよ、バリアフリーの考え方をさらに進め、あらかじめ誰もが利用しやすい構造とする「ユニバーサルデザイン」の考え方に基づいて設計することが望ましい。
(7) ソフト面での対応の充実
海上旅客輸送のバリアフリー化を進めるにあたっては、ハード面とソフト面の対応を併せて行うことにより、初めてその成果が十分に発揮されることから、ソフト面での対応の充実はハード面と同様に重要である。
特に、既存の施設・船舶等において、ハード面での対応が不十分な場合(未対応の場合および新設時に対応すべき場合)や、ハード面の対応が行われた後でも安全性の確保が特に重要となる乗下船時(特にボーディングブリッジのない港湾)においては、船員・地上係員等による人的な対応により、ハード面を補完する必要がある。また、船内で体調が悪くなったとき、ターミナルで切符の買い方や乗船口がわからないときなど、何か困ったことが生じたときにも、船員・地上係員等による人的な対応が必要となる。
ソフト面の対応においては、旅客船事業者の職員(船員・地上係員)による対応が中心となるが、状況に応じてボランティアや一般の乗客による支援も検討する必要がある。