2) サンゴ礁の役割
(1) 物理的な構造の役割
a. 防護機能
サンゴ礁が潮流や波浪や嵐から汀線を防護しなければ、陸地は侵食される。インドネシアでは、サンゴ礁の破壊の結果、沿岸域の防護機能が減少してkm当り820〜1,000,000USドルの沿岸域が失われていると推算されている。モルジブでは、人工消波構造物の費用が12,000,000USドル程度かかっている。
b. 陸地形成機能
サンゴ礁は陸地を形成する。多くの人口を有するインド-太平洋における多くの熱帯の国々は、サンゴ礁によって形成された島に位置している。
c. 生態系形成機能
波の力を排除するサンゴ礁の容量は、ラグーンや堆積性の環境を形成する。したがって、サンゴ礁は海草の生長やマングローブ生態系にとって好ましい環境を物理的に形成している。
d. サンゴ砂生産機能
サンゴ礁は、熱帯特有の白い砂やビーチ観光の主な魅力の一つである細かいサンゴ砂を汀に供給する。
(2) 生物的役割
a. 生物生産機能
サンゴ礁の一次生産に関する研究例は少ないが、総一次生産が約1,500〜5,000gC/m2・yrであり、他の熱帯海域の一次生産よりもきわめて大きい。
参考として世界の海洋における一次生産の分布を図2-3-6に示す。
外洋域での生産値は<35gC/m2・yr、沿岸湧昇域では350gC/m2・yr、熱帯雨林の一次生産は1,000gC/m2・yrと見積もられている。