(10) プロペラナット
プロペラナットは、通常は鍛鋼製で、プロペラ軸に所定の押込量でプロペラを圧入した後、プロペラを締付けるものである。通常一般船の場合、船の前進時プロペラの回転方向は、船尾側から船首側を見て右回転である。この場合、プロペラナットのねじの締め付け回転方向は、左回転(左ねじ)とする。2軸船の場合、外回りプロペラの時は、右舷プロペラのプロペラナットは左ねじに加工し、また、左舷プロペラのナットは右ねじに加工する。内回りのプロペラの場合は外回りプロペラの場合と逆になる。プロペラナットのねじの締め付け回転方向は、船の前進時のプロペラ回転方向と逆方向になるようにねじを加工し、プロペラ回転時、プロペラナットが締め勝手になるようにする。プロペラナットおよびねじの寸法は、プロペラナットがプロペラを押し込む際の要具として使用されることからプロペラの押込力や押込みに使用される油圧ジャッキなどの寸法を考慮して定める。3・19図に示すようにプロペラナットは、プロペラ軸に取付けて締付けた後ロッキングピンやロッキングキーなどの回り止めを設け、プロペラナットのゆるみ防止対策を施す。キーレスプロペラの場合は、プロペラの押込量がキー付きプロペラに比較して多いので、押込み作業には、3・20図に示すような油圧ジャッキをプロペラナットに内蔵した構造のものが用いられる。この油圧ジャッキ内蔵プロペラナットは、プロペラの押込み時、油圧ポンプの油圧で油圧ジャッキを押し、所定の押込量までプロペラを押し込む。また、プロペラを引抜きの時はプロペラナットを逆方向にプロペラ軸に取付け、治具を用いて油圧ポンプの油圧で引抜く。この時キーレスプロペラの場合、プロペラボス内面に設けた油みぞにも油圧をかけて、プロペラの引抜き作業を容易にする。