トップリング溝部には、耐摩環(リングトレーガ)を鋳込みリング溝の摩耗に対処している。初期ナジミを良くするため、表面に錫メッキあるいはグラファイトコーティングを施したものもある。また最近薄肉鋳鉄ピストン(ダクタイル鋳鉄一体形ピストン)も実用化されている。
中・大形機関では、高過給機関になる程ピストン燃焼面の温度は高くなり、この温度が材料の耐熱限度を越えると、亀裂発生などの事故を起こすので、潤滑油によりピストンの裏面を強制的に冷却する必要があり、冷却形ピストンが多く使用されている。ピストンの形状と材質はピストン頂部とスカート部が一体となった鋳鉄一体形から、ピストン頂部とスカート部を分けて特殊鍛鋼製のピストン頂部と鋳鉄スカート、アルミスカートまたはダクタイル鋳鉄(FCD)スカートなどを組合せた組合せピストン、そしてダクタイル鋳鉄一体形ピストンなどが採用されている。それぞれの一例を2・39図に示す。ダクタイル鋳鉄ピストンは保油性、なじみ性に優れ又熱膨張係数が小さく、シリンダライナとの隙間も小さくすることが可能であり、ブローバイ及び潤滑油消費量の低減を図ることができる。ピストンリングもトップリングはガスタイトリング、シリンダライナ摺動面はバレルフェイス、その他シリンダライナの表面処理に合わせた処理(タフトライド処理ライナに対して、クロームメッキリング採用等)を施したものもある。