キャタピラー社の例では、補・82図のNo.4、No.5の電子制御が主力となっており、いずれも電磁制御弁組込式ユニットインジェクターを使用している。
これには、インジェクターのプランジャーをカムで駆動して高圧燃料を得るEUI方式と蓄圧室の油圧で駆動するHEUI方式がある。
いずれも、ほとんど同じ構成の電子制御システムを使用するが、今回は主としてEUI方式の電子制御エンジンを例として説明する。
2) コンピュータ搭載電子制御の必要性
低NOx、低燃費率を実現するためには、燃料を出来るだけ高圧で、短時間に、しかも、最適の噴射タイミング、パターンでに噴射することによって得られる。
補・83図に示すように、最適噴射時期は、エンジン速度と負荷(燃料噴射量)の組み合わせによって変わり、更にアフタークーラ空気温度によっても変わる。
補・83図の中で、一枚一枚の曲面が、特定のアフタークーラ空気温度に対応しており、実際には多数の曲面で構成された、立体的データとなる。
この図でも分かるとおり、運転条件の変化により、最適噴射時期にはクランク角で20度を越える差が生じ、これを機械式進角メカニズムで調整するには、その能力をはるかに越えるレベルとなるため、自由に進角を変えられる電子制御式が必要になる。
更に、必要な進角、高圧、望ましい噴射パターンを得るには、同じ電子制御でも、ユニットインジェクタ式が高圧化に有利で、なおかつ、電磁制御弁組込ユニットインジェクタは、噴射制御の可動部の慣性が少なく、追従性に優れているため、噴射ポンプのラック、スリーブを電磁ソレノイドで操作する方式よりも有利となる。