カム山の摩耗は、表層部の焼入れ硬化層が摩滅すると急速に摩耗するから、運転に支障をきたすので、早めにカム軸及びタペットを交換しなければならない。
(4) プッシュロッドの曲り
自然に曲がることはないが、バルブクリアランスの調整不良、バルブスティック、バルブスタンプなどにより、ブッシュロッドが座屈して曲がりを生じる。プッシュロッドが曲がると、バルブタイミングが大巾に狂うと共に、バルブの開閉作用に支障を起こして、運転不能となる。
(5) ロッカブッシュの摩耗
ロッカの支点であり、ブッシュとロッカシャフトのスキマが大きくなると、正しいバルブクリアランス調整が難しくなり、作動時の衝撃が増大して、亀裂破損や各部摩耗を促進して騒音を増加する。
5) オーバヒート
(1) 冷却水の不足
冷却水が不足すると、機関がオーバヒートを起こし、各摺動部スキマが小さくなり、摩耗抵抗などが増加して出力が低下する。極端な時は焼付きを生じるので運転する前には必ず点検すること。
(2) ジャケット内壁の汚れ
冷却水通路内壁にスケールが付着堆積すると、熱伝導が悪化して、オーバヒートし、熱膨張による亀裂を生じ易く、摺動摩擦が増して出力が低下する。
(3) 室温水温の上昇
気温が上昇すると機関室の室温が上昇し、吸気温度が高くなるので、空気密度が低下して、出力不足となる。
冷却水温度も同様に、気温が高くなると上昇するので冷却効率が低下する。
いずれも、極端な温度上昇は、機関のオーバヒートを起こす原因となるので、ラジエータやヒートエクスチェンジャの容量増加や、サーモスタットの設定温度を下げるなどの処理が必要である。
(4) 冷却装置の不良
1] 冷却水ポンプの性能低下
インペラやケーシングの摩耗、ユニットシールの水もれ、ベアリング摩耗損傷などにより、吐出性能が低下して水流が不足して、オーバヒートを起すことがある。
特にゴムインペラ形の場合はゴムインペラの摩耗損傷やカム板の摩耗による寿命が比較的に短いので時折点検して、交換しなければならない。
2] サーモスタットの故障
ワックスの変質、ワックスの流失、弁軸の曲がりやこじれなどにより、弁が開かなくなると、冷却水がラジエータやヒートエクスチェンジャに流れなくなるので、オーバヒートを起す。