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この差別化戦略の結果、中心商店街230店舗のうち内70店舗が空き店舗を利活用したものとなり、商店街の再生、活性化に結びついた。なお、空き店舗出店者の1/3が市外出身者で商売やまちづくりに意欲的な地元業者による出店となっている。

 

エ 地域への波及効果

1] まちづくりへ発展

黒壁にはガラスを買う目的意識の高い来訪者が訪れ、こうした人が黒壁以外の商店街地区へ流れ出すようになると、黒壁と同様にオリジナル性があり、文化度が高く、土産物を置かない店から人が入りだすようになっていった。こうした状況を見て、従来からある商店主等も自分の店のリニューアルを行うようになり、長浜商店街の全体の活性化へと結びついていった。また、来訪者が市内を回遊する結果、歩くコースも生まれ、まちを見直し、新たなまちづくりへの一歩、すなわち観光都市としての長浜へと踏み出すことになっていった。

 

2] 来街者や空き店舗出店者との交流による市民意識(誇り)の向上

黒壁ができる前の長浜市民は、来客があると隣町の彦根城を案内し、彦根プリンスホテル(西武鉄道系)で食事をするというのが一般的なパターンであったが、現在では黒壁界隈や商店街を案内し、既存の観光施設や市中の食文化を紹介するようになってきている。また空き店舗出店者の1/3は市外出身者で、彼らの新しい感覚と事業意欲は、在来の市民に刺激を与え、意識改革や誇り意識の醸成などの意識向上をもたらした。

 

オ 本事例より得られる示唆

1] わが町を見詰め直すことから開始

黒壁は地元青年会議所が母体となり設立されている。設立までには、「なぜ長浜はこうなってしまったのか」という点について議論を行ったとされる。その結果、これまでの環境変化を理由することをやめ、さらに長浜らしさを指向しながらも、地元とは全く関係の無かった長浜ガラス文化を創出にするに至った。

一方の事例であるのどか村にして自治会における議論をきっかけとして、町の現状(後継問題、農業の課題)を明らかにしながら、どのようなやり方がよいのかということから始まっている。

 

 

 

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