5 観光地運営体制
観光協会は、町民会員が基本で、一部観光事業者が参画しているが、協会としての活動は夏の「サマーフェスティバル」が主である。実質的な運営の主力はペンション、民宿など宿泊関係者が担っており、同協会の他にも商工会、宿泊組合(ペンション、民宿)など様々な団体の担い手となっていることや、本業との両立から機敏に作動できない面がある。同時に、町民参画を基本に置きながらも観光業界以外の住民参加はほとんどみられていない現状がある。
観光と他産業との連携という視点からは、農・工・商業界は、大都市や地域住民をターゲットとした既成の市場出荷にほぼ終始しており、観光客へのアプローチが弱い(観光客をも顧客に取り込もうとする視点が弱い)。特に観光と農業との間では、居住地区や居住歴による意識差から(中央本線・中央道を挟んで北側は開拓による新住民、観光業の集積、南側は旧住民、農業の集積)、食や土産品開発、農業体験といった観光・リゾートの根幹に関わる連携関係が希薄な状態にある。
広域的には4ヶ町村の観光協会で構成する「八ヶ岳観光協会」と民間主導で構成している「八ヶ岳高原活性化研究会」があり、広域観光パンフレットの作成や広域CI運動の展開に取り組まれているが、八ヶ岳を共有する長野県側の「八ヶ岳中信高原観光協会」との連携にはほとんど取り組まれていないのが現状である。
6 小淵沢町への評価
本調査研究において、観光を専門にする関連事業者にヒアリングを実施し、彼らのみる市場動向、小淵沢町への評価や今後の課題等を聴取した。ヒアリングを行った事業者は以下のとおりである。
・観光・リゾートに特化して調査研究を行っている公益法人(以下「公益法人」)
・大手旅行代理店の関連子会社(以下「旅行代理店」)
大手旅行代理店の関連会社であり、大手旅行代理店では実施しえないようなツアー企画等を行っている。いわば商品企画のフロンテイア部分を担当している。
・宿泊施設の業界団体(以下「業界団体」)
・小淵沢町内の観光関連事業者(以下「地元観光業者」)
なお、以下の表現はなるべく発言者の意向を直裁に表現するために発言どおりとしている。
(1) 近年の観光市場動向
市場全体を見ると、家族層および中高年層が主たる牽引層である。しかし、家族層は従来から旅行を引っ張っている層であるが単価が安いことと、まとまった休日でないと動かないため、旅行代理店などから見ると取り込みにくいマーケットである。今後は、中高年層をどう市場化するかが課題である。