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3 協定遵守の問題構造

(1)事例

〔概要〕

外国政府が地方公共団体の調達に関し協定上の問題点を指摘したが、その問題点は特例政令規定事項ではなかった。当該指摘事項に関し、国は協定に違反するおそれがあると判断したが、当該地方公共団体は協定に違反しないと主張した。

〔問題の所在〕

このような事例の具体例としては、第2章において掲げた事例(24p〜26p)のように、地方公共団体(以下では、議論を簡略化するため、地方公共団体が都道府県の場合とする。)の協定適用対象の調達に関し、外国政府が協定第3条、第6条、第8条との関係で、協定違反の指摘をした場合がありえる。

この場合、協定第3条、第6条、第8条の内容は、特例政令規定事項ではないため、各地方公共団体において財務規則違反の問題が生じるかどうかは別として、特例政令違反の問題は生じず、純粋に協定違反の問題として、問題が顕在化することとなる(2)

一般論として、国は、自治法に基づき、地方公共団体に対して一定の関与をすることができるが、この事例においては、国内法令違反ではなく、協定違反を根拠として、国が地方公共団体に対して、助言・勧告(自治法第245条の4第1項)や是正の要求(自治法第245条の5第1項)をすることができるかどうかが問題となる(3)

 

(2) 助言・勧告の可否の検討

助言・勧告については、自治法第245条の4第1項において、「各大臣は、その担任する事務に関し、普通地方公共団体の事務の運営その他の事項について適切と認める技術的な助言若しくは勧告をすることできる」旨規定されているため、地方公共団体の調達制度を担任する総務大臣が助言・勧告を行うべき事例として適切であると判断する場合には、当該地方公共団体の事務が国内法令に違反していない場合であっても、助言・勧告を行うことができると思われる。

したがって、総務大臣が適切であると判断する限りにおいて、協定違反を根拠とする助言・勧告は可能であると思われる。

 

(3) 是正要求の可否の検討

是正の要求については、自治法第245条の5第1項において、「各大臣はその担任する事務に関し、都道府県の自治事務の処理が、1]『法令の規定に違反していると認めるとき』又は2]『著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるとき』は、当該都道府県に対し、当該自治事務の処理について違反の是正又は改善のため必要な措置を講ずべきことを求めることができる」旨規定されているため、協定違反が上記要件1]又は要件2]に該当するかどうかが問題となる。

まず、要件2]に関して、「明らかに公益を害していると認めるとき」という要件が必要とされている趣旨は、地方公共団体の事務処理が著しく適正を欠いている場合であって、しかも、当該地方公共団体内部の問題として放置することが公益上認められないような事態に限るということであり、真にやむを得ないものと客観的に認定されるものでない限り、軽々に是正の要求が行われるべきではないことを意味しているとされる(4)

したがって、協定に違反した事務処理が「著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害している」と認められる場合も理論的には否定できないとは思われるが、協定に違反した事務処理が常に必ず「著しく適正を欠き、かつ、明らかに公益を害していると認めるとき」に該当するとは考えにくいため、そのような意味で、要件2]を根拠とする是正要求は、協定違反是正のための担保措置としては機能しない場合が多いと思われる。

次に、要件1]について、「法令の規定に違反していると認めるとき」とは、文字通り違法な場合であるとされる(5)。しかし、ここでいう「法令」が法律や政令等の国内法令のほか、WTO協定等の条約を含むものであるかどうかは明らかではない。

 

 

 

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