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まず、マサチューセッツ州制裁法が政府調達協定のいかなる規定にも抵触せず、また、前述の政府調達協定に関する3つの主張が否定された場合を前提とする。そこで、同制裁法の導入という合法的な措置により、譲許価値が合理的期待に反して毀損されたという主張がなされることとなる。そこで、同州による制裁法の導入が、政府調達協定の締結交渉時に合理的に予測することが可能であったか否かが問われることになる。この合理的予測可能性の有無が非違反申立の成立の可否の決め手となるが、本件では、協定交渉時には同措置の導入を合理的に予測することは困難であると認定される可能性があり、したがって非違反申立が認められる可能性があるといえよう。

(染谷雅幸/東京大学法学部外国法文献センター助手)

 

注)

(1) 米国各州及び地方政府の制裁一覧表につき、The National Foreign Trade Council(NFTC)のホームページUSA・ENGAGE(http://www.usaengage.org/background/lawsuit/nftcindex.html)のCurrent State & Local Sanctions のState and Local Sanction Watch Listを参照のこと。2000年3月現在の各州・地方政府の制裁措置の状況が掲載されている。

(2) St. 1996, c. 130(1996年6月25日成立)。州法典州中7 § 22G. -22M. に規定される。

(3) 州法典7 § 22G. Definition参照。

(4) 同22J. Restricted purchase list: persons doing business with Burma(Myamar)参照。

(5) 同22H. Procurement of goods ot services from bidders or offerors on restricted list(a)参照。

(6) 同22H. (b)以下参照。

(7) 同22H. (d)参照。同22G. Definitionは「同等に低いオファー価格」を「最低オファー価格より10%高くないオファー価格」と定義している。

(8) 同22G. 中の「ビルマとの取引」の定義には国籍による区別は規定されていない。また同22J. (a)では「現在ビルマと取引を行うすべての者をリストは掲載するものとする」と規定する。さらに同22H. (a)には「リスト掲載のいかなる者よりも調達を禁止する」旨が規定される。

(9) PUBLIC LAW 104-208-SEPT. 30, 1996 SEC, 570 Policy towards Burma.

(10) WTO政府調達協定の各締約国は協定の付表と一般註釈の中で、同協定の無差別原則が妥当する調達の範囲を限定している。米国は付表2で同協定によりカバーされる州政府機関の調達について定めている。同協定の適用範囲に入る地方政府機関は、他の締約国との間の相互主義により、37州の達した。この37州政府は、基準額以上の対象調達に関しては外国商品・サービスに対して内国民待遇を与えることを義務づけられている。マサチューセッツ州はこの対象州政府機関である37州中に含まれている。

(11) WTO政府調達協定第22条2項。

(12) 同第22条3項。

(13) WT/DS88/5WT/DS95/5。またWTO紛争解決了解第12条12項は「申立国の要請のあるときはいつでも、12か月を越えない期間その検討を停止することができ」、この検討が12か月を越えて停止されるときは小委員会は設置の根拠を失い解散されることになる。したがって同小委員会は2000年2月にその設置の根拠を失い解散された。

(14) National Foreign Trade Council v. Baker, 26 F. Supp. 2d 287.

(15) National Foreign Trade Council v. Natsion, 181 F 3rd 38.

(16) Crosby v. National Foreign Trade Council, 120 S. Ct. 2288.

(17) 各裁判所の違憲判断の根拠

 

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なお本件国内訴訟関係の各判決やamicus brief等の関連文書は、前掲註(1)のNTFCのホームページに掲載されている。

(18) 例えばBNA INTERNAT10NAL TRADE DAILY, June 29, 2000のRobert Sumbergの発言。

 

 

 

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