イ 優遇措置
(ア) 小企業優遇、少数民族・女性企業優遇
多くの州、地方政府において、小企業優遇調達制度が存在する。今回調べた中でも、ニューヨーク州、ニューヨーク市以外には存在している。そして、ある意味では当然のことながら、小企業の定義が各地方政府によって異なる。例えば、マサチューセッツ州においては、売上高(年200万ドル以下)で定義しているのに対して、ニュージャージー州では従業員数(100人以下)で定義している。カリフォルニア州ではこの2つの要素を組み合わせ、売上高年1000万ドル以下かつ従業員数100人以下が条件となっている。
また、多くの地方政府において、少数民族・女性企業優遇調達制度が存在している。しかし、カリフォルニア州のようにそのような別個の制度設立自体が差別であるとして、それらを停止しているところもある。このような優遇制度の組み方としては、調達の一致比率を得ることを目的とする目標方式と、一定比率の価格優遇を行うセット・アサイド方式がある。また、マサチューセッツ州のように、少数民族・女性企業認定にあたって州内に本拠のあることを求めないところもあれば、ニュージャージー州のように州内に本拠があることを求めるところもある。
(イ) 州産品優遇(Buy State)・国産品優遇(Buy American)
NASPOによれば(26)、アラスカ州、ハワイ州、インディアナ州、アイオワ州、ルイジアナ州、マサチューセッツ州、ミシガン州、モンタナ州、ネバダ州、ニューメキシコ州、ニューヨーク州、オクラホマ州、ロードアイランド州、サウスカロライナ州、サウスダコタ州、テキサス州、ワイオミング州が州産品優遇制度を持っている。
オレゴン州の資料によれば(27)、アラスカ州、アーカンソー州(州外の刑務所産品に対してのみ)、ハワイ州、アイダホ州(印刷のみ)、イリノイ州(石炭のみ)、アイオワ州(石炭のみ)、ルイジアナ州、ミシガン州(印刷のみ)、モンタナ州、ニューメキシコ州、ニューヨーク州(食料のみ)、オハイオ州(印刷のみ)、オレゴン州(印刷のみ)、ペンシルベニア州(州政府暖房用石炭のみ)、サウスカロライナ州、サウスダコタ州(ミルクのみ)、バージニア州(石炭)、ウェストバージニア州、ワイオミング州が州産品優遇制度を持つ。
資料により食い違いのある点も多いが、全体としては、未だにかなりの州において州産品優遇が見られる。ただ、印刷、石炭といった特定の項目に限っている例も多い。また、カリフォルニア州においては執行停止になっており、ニューヨーク州においては食料に限定されつつあり、マサチューセッツ州においても矯正施設・病院の食料という特殊な領域に限定されており、ニュージャージー州においては存在しないことからもわかるように、減少の傾向にはあるようである。ただし、資料の示すように、アラスカ州(5-15%)、ハワイ州(3-15%)、ルイジアナ州(10%)、モンタナ州(3-8%)、ニューメキシコ州(5%)、サウスカロライナ州(7%)、ウェストバージニア州(2-5%)、ワイオミング州(5-10%)のようにかなり広範に州産品優遇制度が残っているところも多い(28)。
国産品優遇については、NASPOの1994年の資料によれば、カリフォルニア州(乗用車)、コネティカット州(繊維)、ハワイ州(適用するには曖昧な規定)、イリノイ州(公共事業用の鉄)、アイオワ州(自動車)、カンザス州(使われたことはない)、ルイジアナ州(自動車)、メリーランド州(公共事業用の鉄)、ミネソタ州、ミシシッピ州、ミズーリ州、ニュージャージー州(公共事業用物資)、ニューメキシコ州、ニューヨーク州(公共事業用の鉄)、オハイオ州、オクラホマ州、ペンシルベニア州、ロードアイランド州(鉄)、サウスカロライナ州、ウェストバージニア州、ウィスコンシン州、ワイオミング州(牛肉)が国産品優遇制度を持っていることになっている(29)。
また、貿易・投資円滑化ビジネス協議会によれば、カリフォルニア州は州で調達する自動車はすべて米国製であることを求めており、アイオワ州は自動車調達に当たり米国車を外国車に比して5%優遇しており、ニューメキシコ州は州機関は自動車調達に当たり北米で組み立てられた自動車のみを購入するとしており、ルイジアナ州は外国自動車の購入禁止可能としているという(30)。これは、NASPOの資料ともほぼ一致する。
ただ、ここでも全般的には国産品優遇は減少する傾向があるようである。例えばカリフォルニア州においては執行しなくなっているという(ただし自動車の場合がどうなのかについては具体的に調べてみる必要がある)。また、公共事業用の鉄やあるいは自動車等に品目が限られている例も多い。