(イ) 小企業優遇
ニューヨーク州においては、現在、一般的な小企業優遇プログラムはない。
(ウ) 少数民族・女性企業優遇
少数民族企業、女性企業については、具体的な優遇措置(一定の調達枠の設定の一定の比率での価格優遇)はない。しかし、調達契約後、受注企業に一定のアファーマティブ・アクション・プランを求め、そのなかで少数民族や女性の利用について目標を設定させることはある。このアファーマティブ・アクション・プランを達成しなくても、契約資格を失うということはないが、次回の入札の際に過去の実績の一環として考慮されることもありうる。なお、これはセット・アサイド(set aside)ではなく目標(goal)である。
(エ) 州産品優遇(Buy State)
州法上(Omnibus Procurement Act of 1992 and Amendment of 1994, Section 165.6 a-e of the State Finance Law)、調達部局であるOGSは、州外企業に対してメーリングリストに載せることを拒否したり、発注を拒否したりすることができることになっている(つまり論理的には州産品優遇の余地が大きい)。しかし、このような州産品優遇が実際に実施されているのは、現在では、ミルク等の食料品だけである。
(オ) 国産品優遇(Buy American)
ニューヨーク州においては、公共事業において利用される鉄について、国産品優遇が規定されている。州内には製鉄工場は基本的にはないので、これは事実上の州内企業優遇を目指すものではなく、その理由は安全保障上のものである。これ以外については、州議会で求められることはあるようであるが、知事が拒否権を行使しているので存在しないという。
(カ) リサイクル品優遇
どこの州における産品かを問わずに、リサイクル品については10%の価格優遇が与えられている。さらに、リサイクルの原料である廃棄物の50%以上がニューヨーク州内産である場合には、さらに追加的に5%の価格優遇が与えられることとなっている。
ウ 外交的制裁としての差別措置
ニューヨーク州においては、外交的制裁措置としての調達上の差別措置は存在しない。
エ WTO政府調達協定への対応
ニューヨーク州は、政府調達協定締結における連邦政府と州政府との調整において主導的役割を果たした。ただ、その実施措置として、州内において求められた措置は具体的にはあまりなかったようである。具体的措置としては、まず、政府調達協定にあるように紛争解決メカニズムを整えた。また、入札のアナウンスをまとめて出版物するようにした。
前述のように、ニューヨーク州には、外交制裁としての差別措置は存在しないが、いくつかの優遇措置は存在する。しかし、これらは政府調達協定の対象外か適用除外の対象となっているようである。例えば、公共事業における鉄の国産品優遇は政府調達協定の米国付表2の注において明確に適用除外とされている。