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なお、自治事務か団体委任事務かを問わず、「地方自治団体は法令又は上級地方自治団体の条例に違反してその事務を処理することはできない」とし、間接的ながら市道と市郡区の上下関係を認めた。

地方自治団体の職員が手掛ける事務はこれに尽きない。地方自治法第93条は、各地方自治団体において施行する国家事務は法令に他の規定がないかぎり、その長に委任して行なうとし、いわゆる機関委任事務制度を設けている。これにかかわる主なものは、従前の普通地方行政官署・普通地方行政機関が行なっていた国の地方行政事務である。これらの事務処理を確保・担保するために設けられたのは同法第157条の2の職務履行命令訴訟制度である。

 

(3) 地方自治団体の行財政

地方自治団体にかかわる諸事務は職員と財源によって具体化されるものである。ここでは国−地方関係を中心に地方自治団体の職員と財源についてみてみよう。

 

図表3-3 地方自治団体等職員数(2000年5月1日現在)

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出典:行政自治部『統計年報』(2000年)63頁。

注1:憲法上の独立機関である国会(3,346人)、法院(12,759人)、憲法裁判所(193人)、選挙管理委員会(1,867人)に属するもののほか、職員数非公開の大統領秘書室、大統領警護室、国家情報院(旧国家安全企画部)の職員および軍人・軍務員は含まない。

注2:広域の国家公務員数は、2000年2月改正の「地方自治団体におく国家公務員の定員に関する法律施行令」による。

 

まず、地方自治団体の職員については、「大統領令の定める範囲内で当該地方自治団体の条例で定め」(広域)、あるいは「大統領令の定める基準に従って」広域地方自治団体の長の承認を得て「当該地方自治団体の条例で定める」(基礎)事務分掌規程=職制(地方自治法第102条)にあわせて、「当該地方自治団体の経費で負担する地方公務員をおくが、その定員は大統領令の定める基準に従って当該地方自治団体の条例で定める」ことになっている(同法第103条第1項)。そこで、1994年12月に、大統領令「地方自治団体の行政機構及び定員基準等に関する規程」、内務部令「地方自治団体の行政機構及び定員基準等に関する規程施行規則」が制定された。これは地方自治団体にとって最も厳しい必置規制であるといえる。図表3-3にある地方公務員はこの規程・規則にしたがって定められた地方自治団体の条例に基づいておかれたものである。

なお、図表3-3に明らかなように、地方自治団体には少なからぬ国家公務員がおかれている。これは、同法第103条第4項「地方自治団体には第1項の規定にかかわらず法律の定めるところにより国家公務員をおくことができる」を受けて1994年12月に定めた「地方自治団体におく国家公務員の定員に関する法律」および大統領令の同施行令に基づいておかれたものである。基礎の市郡区には、副市郡区長の身分が地方公務員にかわった1998年7月以降、国家公務員は存在しない。しかしながら、広域地方自治団体の副知事をはじめ主要幹部職員の身分は依然として国家公務員である。任用権と職務上の指揮監督権を大統領(および主務部長官)と直接公選の市道知事にそれぞれ分属させている点では、地方分権推進委員会の勧告を受けて2000年4月に廃止した従前の日本の地方事務官制度に似たものであるが、副知事など指定の首脳職を占めさせているところでは、それとはおもむきを異にするものである。なお、地方自治団体におかれる国家公務員は、後述するように、これだけではない。

 

 

 

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