〔概要〕
B県は、工場立地協定書において、「工場の建設及び操業に必要な資材及び役務の調達にあたっては、業務上支障のない範囲内において、地元企業を優先するものとする。」と定めている。
〔問題の所在〕
TRIM協定第2条第2項は、内国民待遇に違反する貿易関連投資措置を禁止しており、同協定の付属書において禁止される措置を例示しているが、本件の措置は、付属書例示表が明示的に禁止する現地調達要求(ローカル・コンテント要求)に該当し、本協定に違反するおそれがあると考えられる。
(3) 補助金協定
事例1:県産木材使用を条件とした住宅購入世帯への補助金の交付
〔概要〕
C県は、県産の木材を使用することを条件として、住宅を建設した世帯に対して建設費の一定割合について補助金を交付している。
〔問題の所在〕
補助金協定第3条は、農業に関する協定に定める場合を除くほか、輸入物品よりも国産物品を優先して使用することに基づいて交付される補助金を禁止している。
本件の補助金は、県産の木材を使うことを交付の条件にしているが、県産以外の木材には輸入の木材も含まれるため、輸入物品よりも国産物品を優先して使用することを条件にすることになり、補助金協定第3条で規定する禁止補助金に該当するおそれがあると考えられる。
事例2:地元工場メーカー品の購入に対する補助金の交付
〔概要〕
D市においては、市内に工場のある自動車メーカーの自動車購入者に対して、市から補助金を交付している。自動車メーカーについては、市内に工場があることが条件であり、外資系企業であっても交付対象となる。
〔問題の所在〕
補助金協定第3条は、農業に関する協定に定める場合を除くほか、輸入物品よりも国産物品を優先して使用することに基づいて交付される補助金を禁止している。
本件の補助金は、県内に工場がある自動車メーカーの購入を条件としている。形式的には外資であっても県内に工場があれば対象となるが、実際には国内企業しか工場を設置していないのであれば、輸入物品よりも国産物品を優先して使用することを条件にして交付される補助金(補助金協定第3条に規定する禁止補助金)に実質的に該当すると言われるおそれがある。市は、当該補助金は内外無差別に行われたものであり、国産物品優先使用補助金に該当しないことを説明できるようにしておく必要がある。仮に、地元工場産品の優遇のための補助金であるということが判明すると、国産物品優先使用補助金に該当する可能性があると考えられる。
(4) サービス協定
事例1:サービス産業の認可のあり方
〔概要〕
E県では、サービス業を開業しようとした際、認可の基準の運用が曖昧で、担当官により恣意的に運用されており、合理性、客観性、公平性が保たれていない。
また、サービス業を開業しようとする者から認可申請を受け付けたが、申請に対して何も決定することなく1年が経過した。申請者からの問い合わせに対しても処理状況に関する情報は提供していない。
〔問題の所在〕
サービス協定第6条第1項では、特定の約束を行った分野において、加盟国の措置が合理的、客観的、公平な態様で実施されることを確保すると規定されている。このため、E県の措置はサービス協定に整合しない可能性が高いと考えられる。
また、サービス協定第6条第3項において、特定の約束が行われたサービスの提供のために許可が必要な場合には、加盟国の権限ある当局は、国内法令に基づき完全であると認められる申請が提出された後合理的な期間内に、申請に関する決定を申請者に通知すること、また、申請者からの申請の処理状況に関する情報提供要請に対しては、不当に遅滞することなく応ずることと規定されている。このため、本県の措置は協定に整合しない可能性が高いと考えられる。