3 公営企業の沿革と現在の課題
(1) 沿革
現在の公営企業の沿革を知ることは、公営企業の役割を考察する上で、一助となるものと考えられる。
主な事業別にみると、まず、電気事業は、明治25年に京都市の水力発電から始まり、太平洋戦争時に厳しい電力供給状況のため国家管理となった。戦後、昭和26年に民営9電力会社が発足し、公営企業は、末端供給から民間事業者への卸売供給に事業形態を変更した。
ガス事業は、明治9年に東京府が東京会議所からガス灯を引き継いだところから始まり、公営中心に発展したが、その後、民間による買収が進み、現在、公営企業のシェア(販売量)は3.4%となっている。
交通事業は、路面電車に始まり、続いてバス、さらに地下鉄というのが大きな流れとなっている。具体的には、明治36年に路面電車が稼働し、大正の中期に全盛期を迎えるが、昭和になるとバス事業が盛んになる。しかし、バス事業は、その後、モータリゼーションの発達等により不振に陥り、現在では指定都市の行う地下鉄事業のウエイトが大きくなってきている。
病院事業は、明治以来、公的医療を中心に進められてきたが、昭和37年の医療法改正により、私的医療機関中心主義に政策転換がなされた。しかしながら、昭和40年以降、医療過疎地の拡大、休日救急の不備等の問題が発生し公的医療が見直されたが、現在は官・民の役割分担が課題となっている。
水道事業は、神田上水等江戸時代の幕府営・藩営事業にまで遡る。現在、水道法上は民間も経営主体となり得るが、水道事業は元々衛生の確保を目的に進められてきたという経緯から、平成10年度末で、公営が3,677事業に対し、民営が別荘地の自己配給を中心に11事業と、実質的には公営のみと言って良い状況になっている。
下水道事業は、都市の公衆衛生及び浸水対策として、明治33年の旧下水道法制定により開始された。下水道は雨水と汚水の両方を処理するが、特に雨水対策の重要性から公益性が高いという理由で、下水道法上、設置・管理主体が地方公共団体に限定されている。