3 個別分野における公民協働
(1) 介護保険分野
ア 介護保険分野におけるNPO法人の参入の現状
介護保険制度は、従来、老人福祉と老人医療に分かれていた高齢者介護に関する制度を再編し、利用しやすく公平で効率的な社会的支援システムを構築することを目指して導入されたものであり、民間事業者等の多様な事業主体の参入により、民間活力の活用が図られることによる効率化が期待されたことも、その導入理由となっていた。
そのような多様な事業主体の一つとして、NPO法に基づくNPO法人が挙げられる。平成10年にNPO法が施行されたことにより、NPO法人が介護保険分野に参入し、相当の役割を果たすのではないかとの期待が、持たれていた。
しかしながら、これまでのところ、全国の介護保険指定事業者のうちNPO法人が占める割合は、平成12年7月1日現在、約1.3%程度に留まっている。この理由としては、
1] 介護保険分野に参入した民間企業が業績不振によりリストラを行っていることに見られるように、NPO法人か否かを問わず新規参入が困難となっていること。なお、新規参入が困難となっている理由としては、予想に反してサービスの利用が伸びなやんでいること。あるいは、既存の社会福祉法人が地盤を固めているといったことが挙げられる。
2] NPO法人として法人格を取得するための手続きが煩雑で、認定に時間を要すること。
3] NPO法人に対して税制上のメリットがないこと。
4] 介護報酬が事業者に支払われるのはサービスの提供を行ってから約2ヶ月後であり、その間の資金手当が必要であるが、金融機関からの資金調達が困難であること。
等が指摘されている。
イ 介護保険分野におけるNPOの意義
前述のとおり、介護保険制度は本来サービス事業者の多様化により、競争原理を導入し、サービスの質を向上させ、同時に効率化を図るという考えを前提としているところである。さらに、NPOについては、NPO独自の高いモラル等により質の高いサービスを提供することが期待されるところであり、そのようなNPOがそれぞれの地域の中で一定のシェアを確保することは、その地域全体におけるサービスの質の向上に寄与する(BestValue)と考えられる。
また、地域の住民がある程度の対価を得て社会参加を行う一つの場になるという意義もあるとともに、地域における雇用創出も期待される。