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はじめに

 

近年、余暇時間の増大とともに、海水浴や魚釣り、サーフィン、ダイビング、ヨット、モーターボートなど各種マリーンスポーツが活発化している。しかし同時に、それら愛好家と漁業者や地域住民との間に様々なトラブルが発生している。例えば、地域における騒音やゴミ問題は人として当たり前のマナーが履行されていないという問題であり、近年多発しているレジャーボート等の海難事故に対する対処の問題であったりする。時には漁業協同組合に対する協力金のあり方が裁判になっているケースもある。

一方、行政サイドにおいても環境庁や農林水産省・文部省などが中心に、エコツーリズムや農林漁業体験学習が奨励され、そうした分野に注目して事業を実施している自治体もかなりある。しかしながら関係市町村や漁業協同組合においては、漁業体験学習を地元児童や住民(親子)を対象に行うケースはあっても、広く地域外の住民を対象にする活動はあまり行われていない。また地域によっては、実施期間が短いことや、事業そのものの理念や手法が明確に定まらず、相互の情報交換のネットワークなども未成熟なため、各地各様に、これまでの経験にのみ頼り、その多彩で魅力的な海や漁業・漁村の資産を十分活用して実践しているとはいえない実態にある。

平成12年度において(社)漁村文化協会では、地域社会と海洋レクリエーションの関係者及び広く一般市民との共生をめざし、併せて漁業・漁村地域の振興に寄与することを目的として「海・沿岸域の総合的活用を促進するための人づくりと組織づくり検討委員会」を設置し、一年間に亘り標記課題に対する検討を行った。

検討委員会ではまず各地の実態や課題の把握の必要性を痛感、全国の漁業協同組合並びに沿海の市町村議会事務局を対象とする現状や問題点に関するアンケート調査を実施し、現状の把握とともに各種関係資料の収集を行った。

全国的に実施した今回のアンケートは回収率がかなり高く、この種のテーマに関する漁業・漁村地域における関心の高さが浮き彫りにされた点は、大きく評価できると考えている。検討委員会としては、これらの資料から多くの問題点や、さまざまな興味深い実例など多くの貴重な情報が得られた。これを基に委員会では、円滑に海・沿岸域を活用するための、海の安全対策やルール、環境保全、漁村に伝わる地域文化の発掘をはじめ、海・沿岸域の総合的活用を現地にあって実践していくための人づくりの重要性や必要性を深く認識するとともに、これから全国各地においてこうした活動を展開していくための人づくり、組織づくり、場づくりの具体的な展開方策などを検討してきた。

 

 

 

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