日本財団 図書館


ア. 各種所得控除についてそれぞれの額は国税よりも若干低くなってはいるが同じ種類のものが控除されることになっており、所得税の構造とほとんど変わっていない。

イ. 譲渡所得等の分離課税制度についてもほとんど同じ構造になっている。

ウ. 前年所得課税方式を採用している。(退職所得を除く。)

このような課税方式になっているため、住民税は所得税と同じく人税的性格が依然として強く、実質的には所得税の附加税であるという議論がでてくる。しかもこのことから地方税としての負担分任的性格を後退させる傾向を生じさせやすくすることにつながる。住民としても二重課税を受けている感じを持つことになり、地方行政のレベルにおいて受益と負担の対応の議論をしにくくしている。また、住民税については所得税の影響を遮断しその自主性を確保しなければならないという議論は強いにもかかわらず、現実には、例えば、住民税の課税最低限が所得税の課税最低限に引きずられる結果を招来している。

地方税の課税にあたっては「薄く広く」ということが住民にとっても望ましいと考えられるし、他方、時間的な意味でも「受益」と「負担」の感覚にズレをなくすことが望ましいと考えるならば、前述したような住民税の現在の仕組みは根本的な問題を含んでいると言える。その改革の方向としては、

工. 所得金額の計算にあたっては課税ベースをできるだけ広くする方式に改める。

オ. 政策的な譲渡所得等の分離課税制度については、可能な限り総合課税方式にする。

力. 現年課税方式に改める。

工.については、所得税の総所得金額等から基礎控除と扶養控除だけをした金額を課税標準とする方式、あるいは、この方式からさらに所得税額を控除した金額を課税標準とする方式に改めることによって、住民税の独自性の強化を図ることが考えられる。

また、力.については、これまで、源泉徴収義務者の徴収事務、給与所得者以外の者に係る申告手続きが複雑になり、事務負担の増加等の技術上の問題が生じてくるのは大きな問題であること、また、力.への変更年度においてどうするか等の問題も指摘されているところであるが、これらの問題については、国と地方公共団体との協議はもちろん、納税者や特別徴収義務者の協力や情報処理技術の活用等によって解決することができるのではないかと考える。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION