3] 充実すべき税目についての基本的な考え方
今後地方税を充実するに当たっては、政府の各種審議会や閣議決定等において繰り返し述べられているように「地方公共団体の安定的な財政基盤の確立に資する、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系の構築」が必要である。
地方税は、行政サービスに対する応益課税としての性格が強く、地方行政サービスは安定的な供給が必要なものが多いので、景気変動に関わらず税収の安定的な確保が図られるような税のウェイトを高めることが重要である。また、平等指向が強く、どこの地域でもナショナルミニマムの保障が強く求められる日本では、偏在度の少ない地方税の充実を図らなければならない。地域間の税収格差が余りに大きくなるような充実強化策では、広く関係方面の理解を得ることは難しいと考えられる。
こうしたことに加え、地方税の拡充に当たって、具体的な税目や税の仕組みを検討する際には、受益と負担を連動させる税金は何かということを重要な基準として考えていかなければならない。
前述の通り、受益と負担の明確化により財政構造改革の推進に寄与することは、国から地方への税源移譲の重要な意義の一つであり、地方分権は進んだが、財政錯覚が増すような税源の拡充になり、歳出構造の非効率化や膨張を招くような事態を招いてはいけないのである。
政府税調中期答申においても、一般論として「地方税については、負担分任性や応益性を有する税制が望ましいとされています」とした上で、個別税目の充実確保策について、「個人住民税は、…受益と負担の明確化という観点…からその充実が望ましい」、「法人事業税への外形標準課税の導入は、…応益課税としての税の性格の明確化…等の重要な意義を有する改革です」等と指摘している。
【参考:財政錯覚】
財政支出が行われている以上、必ず国民・住民には費用負担が生じているが、財源調達の方法等によっては、国民・住民が費用の発生を実際よりも少なくしか(あるいは全く)認識しないということが起こりうる。これを財政錯覚と呼ぶ。