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3 アンケート調査の分析

 

(1) 転居行動と意識

都心居住者、都心外居住者ともに約8割が転居を経験しており、同じ住居に住み続けている者は2割である(Q2)。転居経験者のうち、都心から都心へ、都心外から都心外へと同じ地域内での転居が各々3分の2を占め、都心から都心外へ、都心外から都心への転居が各々3分の1である(Q3)。「都心からの転居」というと、都心から都心外へと想像されがちだが、意外と同地域内での転居が多く、また、都心外から都心への転居も少なくない。

次に、居住地域の選択理由を見ると、都心居住者は「通勤や交通、買物等の利便性」、都心外居住者は「地縁や家族への配慮」や「一戸建て取得希望」を多く上げている(Q5、Q6)。また、表4中には掲載しなかったが、都心外への転居者で「子どもの成長」、「自然が豊富」を理由として挙げた者の数は、同じ都心外からの転居者よりも都心からの転居者の方が多い。また、居住地選択に関係して「今後とも(または将来)都心に住みたいか」との設問に対して、都心居住者の約9割が「住みたい」としているのに対して、都心外居住者では4分の1である(Q8)。

こうした転居行動や意識からは、転居先を取り巻く諸条件が現状とあまり変わらないような地域を転居先として選択したいという意識があるのではないか、言い換えると、現在の居住地と比べて周辺環境が大きく変化することを望まない傾向があるのではないかと推察される。そうであれば、都心居住者に都心に住み続けてもらうことが都心居住推進のための最も有効な施策であろう。それは、都心居住者が都心外に転居しなくてもよいような条件を整備することであり、アンケート調査からは、「子ども」、「自然」に関する何らかの条件と言えそうである。

 

(注)本報告書において、住宅の広さや間取り、設備等の住宅固有の規格や種別を「居住環境」、利便性や景観、自然等に影響される環境を「周辺環境」として区別する。両方を総称して「住環境」という。

 

(2) 都心居住に必要な条件に関する意識

次に、別の角度から、都心居住に求められる条件・ニーズについて考察するため、都心居住の希望の設問(Q8)で「都心に住みたくない」と回答した者に対して、「どのような条件が整えば都心に住んでも良いと思うか」との設問を設けた(Q9)。

回答のあった条件は、「住宅の価格に関すること」と「大気汚染や騒音、自然等の住宅の周辺環境に関すること」に大きく分類できる。都心の居住地としてのイメージの設問(Q7)でも、「住宅の価格が高く、ゆとりある居住空間が形成されにくい」が1位となっており、価格が大きな関心事になっている。

 

 

 

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