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9. 「大阪市及びその都心居住促進にあたっての住宅政策について」

 

大阪市 計画調整局 企画調整部 政策調査課 宮地一弘

 

はじめに

都市社会は、一人ひとりの市民が集合してつくるコミュニティである。したがって、都市が健全で活気に満ちた社会であるためには、その構成員である市民一人ひとりが等しく尊重され、誰もが自己の能力を最大限に発揮し、いきいきとくらしていること、及びその集合体である人口が、都市にとって適正な規模で、構成上も均衡がとれていることが基本的な条件であると言える。

大阪市では、総合計画21においては、都市の活力を維持するため年齢・世帯規模など人口構成面のバランスを確保すること、周辺都市のスプロール的開発を抑制するとともに魅力ある居住水準・居住環境を備えた職・住近接を促進すること、国際中枢都市としての産業経済機能・・文化機能等と居住機能のバランスを確保することの3つの視点に基づいて、平成17(2005)年の人口を280万人程度、昼間人口を410万人程度と設定し、住・職・遊のバランスのとれたまちづくりを進めることとしている。

大阪市の人口は、総合計面21策定後、バブル経済の進展とその後の長期的な景気低迷など社会経済状況の急変を受け、世帯形成期や出産・育児期の人口の市外流出などによる急速な高齢化や世帯規模の縮小などを伴いながら減少傾向が続いていた。

このような中で、大阪市総合計画審議会の『大阪市人口回復策の基本方向について(答申)』などに基づき、住宅・住環境整備、安心して子育てできる環境づくりなど、魅力ある大都市居住の創出に向けて総合的な施策を推進してきた。

この結果、平成12年国勢調査結果速報では、約259万9,000人で前回の平成7年に比べ3,800人(0.1%)の減少に止まっており、人口減少はぼぼ収束する傾向を見せている。

また、近年、北区、西区、中央区、天王寺区など都心区において人口増加傾向が顕著になっているほか、平成12年中の社会動態が38年ぶりに増加に転じるなど、新しい動きも見え始めている。

今後とも、このような動向を的確にとらえ、都市活力の基礎を支える人口構成バランスの改善に向けて、引き続き積極的に取り組むことが必要である。

一方、大阪市の昼間人口は、平成7年に約380万人、昼間流入人口は、約150万人となっており、市内居住を積極的に推進することが重要である。

このような視点から、この調査報告書では、まず、大都市・大阪に人が住むことの重要性について整理し、次に、大阪市の人口の現状を踏まえ、最後に大阪市が現在進めている住宅政策、とりわけ都心部の居住活性化をめざす各種制度、人口構成の均衡化を目指して新婚世帯層、子育て層を中心とした中間所得者層向けの各種の融資・助成制度などについて紹介するとともに、住まいに関する情報の提供や発信により大阪市域内での住み替え、市外からの人口呼び戻しを促進し、市域の活性化を図る施設として建てられた「住まい情報センター」について紹介する。

 

 

 

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