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一言で言うなら、われわれはポストモダニズムのまとめ売りに比べれば、過激に現代的な展望の方に与しているのだ(たとえばGiddnes(1990)の方がBoje et al. (1996)やBurrell(1997)より啓発的だと考える)。現実は社会的な構造を持っているが、われわれはすべての構造を等しく鵜呑みにしているわけではないし、構造の中には他の構造に比べて結果的に長続きするものもある。そうした、利用可能な経験にもとづく証拠と一致することが、一つの重要な検証である。また、関連する理論なり仮説なりが、議論されている現象によって直接影響を受けた人々の、明確に表現された経験と、どれほど重なるかも、一つの検証である。三つ目の検証として、理論なりモデルなりが、論理的な意味で、内部的に、どれほど明瞭で整合性を持っているか、というものもある。これら三つの検証を同時に適用したにせよ、「無瑕」で究極の「真実」に向かって導かれるとはかぎらないが、少なくと詳細叙述と解説がより適切なものとより不適切なものとを区別する助けにはなるにちがいない。

 

われわれの理論へのアプローチはかなり普遍性があるが、きわめて特殊な一組の提案に固執するよりはむしろ全体を重視するという意味において、われわれが「組織尊重主義者」の解説には少なからぬ威力があると思っていることがはっきりする。こう言ったからといって、政治力学と経済力とを、あるいは時にローカル的情況にかかわる要因を否定することには「ならない」。また、「新しい組織尊重主義」のある特定の一派(Lowndes, 1996)に対する確固たる嗜癖を認めることにもならない。それよりはむしろ、単に経済と政治のより広範に及ぶ力が―少なくともパブリック・マネジメントの改革の分野においては―必ずと言っていいほど「組織」のいくつものネットワークを通して考えられていることを認めるにすぎない。これらのネットワーク、そしてそうしたネットワークを構成する個々の組織に固有な特徴は、改革の過程で実際に起きることの方向を定める絶大なる効果を持っているし、それゆえ変化の過程の最終的な結果やその産出物に対してもそれらを方向付ける効果を持っているのである。むろん、ネットワーク自体は変化することが可能だし、変化するが、そのスピードは改革のレトリックが人に信じ込ませるスピードには遠く及ばない。時に、はるか昔の歴史上の妥協がわれわれの構造や組織の秩序の表面に依然として刻印されているのが見つかることもある。こうした限定的な意味において、われわれはおそらく、選りすぐりの過激な組織尊重主義やより強力な構成主義者の社会学的組織尊重主義よりは、穏健な構成主義者の歴史的組織尊重主義に近いだろう(Premfors, 1998)。

 

そういうわけで、一方の極をものものしい政治的な理念と地球規模の経済的圧力とし、もう一方の極を公務員の日々の営みのうち、きわめて多くを占める、特定の個人や作業班、部局の間の相互作用といった「ミクロ的フロー」とすれば、本書の大半は、その間の、中間的なレベルの分析に終始している。このレベルが、興味深いパターンと特出したヴァリエーションを双方ともあらわにする普遍的なレベルなのだ。以下の章において、われわれは収歛も拡散も等しく取り扱っていく。

 

 

 

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