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3. 持続性に配慮した観光地づくりの必要性

 

■マス・ツーリズム等のこれまでの観光地開発に対する反省

○ヌサドゥア開発の反省

・エリアを限定し、十分にコントロールされた開発によって、バリ文化や環境への影響をうまく抑制した点については評価される。しかしながら一方で、地域・コミュニティといった視点からみると、観光収入の分配、地域振興等の点については課題が残るとされている。

○クタ開発の反省

・ヌサドゥアとは対照的に、コントロールがほとんどなかったために、バリ人以外のインドネシア資本及び海外資本が中心となって開発が急速に進められた。例えば、クタの街のほとんどの土産物店はバリ人ではなく、インドネシアのジャワ人・マドゥラ人によるものであるという状況となった。また、多くの観光客は執拗な路上の物売りに不快に感じ、州当局や観光事業者に対して不満を漏らすようになっていった。

・さらに、さんご礁は空港建設とヌサ・ドゥア道路整備に使われたために、破壊されていっただけでなく、年2cmずつのペースで海岸部が侵食されていった。

・その結果、クタにおける地域文化、コミュニティ、自然環境などの魅力が破壊されてしまった。

・また、バリ人と外部からの観光事業者との間にトラブルも生じていった。クタビーチの宗教的な意味がある位置に建てられた飲食ビルの一角を占める土産物業者との軋轢から、地元民により何店かの土産物露店が焼き払われるという事件が発生した。

・最近、地元住民の要求に従う形で、クタ村当局によって、クタビーチにある飲食店は一掃された。

 

■観光から得られる収入・利益の不平等な分配

・インドネシアの場合、持続可能な観光地づくりの必要性は、まず、収入・利益の公正な分配の実現の面から捉えられている。

・これは、これまでのインドネシア、バリにおいては、観光から得られる収入・利益が地域に波及せず、不平等に分配されてきたためであると考えられる(外資など大規模事業者や中央政府が収入・利益を享受してきたといわれている)。

・その結果、インドネシアでは、地域・コミュニティの持続性のために、この不平等を是正する必要があるとの認識が概ね共有されている。

 

■環境・地域資源の保全

・また、持続可能な観光地の実現には、環境保全、地域資源の保全が必要ということについても、政府、学識者、NGOでも共通した認識となっている。

 

 

 

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