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はしがき

 

平成12年11月に開催された「行政苦情救済・オンブズマン 福岡フォーラム」には、カナダ・ケベック州のオンブズマンであり、現在、国際オンブズマン協会の事務局長をされているダニエル・ジャコビー氏をお招きし、また、国内からは約300人の方々のご参加をいただき、熱心な討議が行われました。

 

ジャコビー氏は、基調講演において、「オンブズマン制度は、常に政府の行政上の不当行為に対して目を光らせていることから、この制度を『政府を見張る番犬』であるという人もいるが、最も相応しい形容詞だとは思わない。番犬は、吠えるし、噛みつきもする。勿論、オンブズマンも批判をして噛みつくことがあるが、同時に公的機関に協力をすることもある。やはり、公的機関の協力者というように形容する方がよいと思う。公的機関もオンブズマンも、結局は公共サービスの質を高めていくことに取り組んでいるのであるから、公的機関は、オンブズマン制度を公的機関の有効性を向上させるための一つの要素として捉えて欲しい」ということをお話になりました。

これは、我が国の行政相談制度の中における行政相談委員の役割と全く共通する考え方であり、呼称こそ異なりますが、私どもは、諸外国のオンブズマンと同様の活動をしているのである、ということを再確認するとともに、今後とも機会を捉えて海外の仲間と知識、経験、情報の交換を行う等お互いに切磋琢磨し、個別の事案についての適切な処理、行政運営の改善への積極的な関与に努めたいと考えた次第です。

 

ジャコビー氏の講演に続き行われましたパネルディスカッションにおきましては、司会の川上先生(西南学院大学法学部教授)のリードによりまして、各パネリストから我が国の行政苦情救済制度について様々な意見が述べられ、また、会場からも多くの質問が出されるなど、非常に活発な討論が行われましたが、その要点は、「行政苦情救済制度は、他の制度では補えない欠陥を埋めるために出来ている制度であるから、この制度だけがうまく働けば万事めでたし、というものではなく、他のいろいろな制度、仕組みを通じて、お互いの欠点を補いながら国民の権利・利益の救済に万全を期していくことが必要であるが、行政苦情救済制度は、行政に対する国民の信頼を確保する仕組みとして有効な制度であり、この制度の発展を推進していくべきである」ということであったと思います。

私どももこれを機に、行政相談(委員)制度の発展のために、一丸となって取り組んでいくことが必要であると思います。

 

平成13年1月 社団法人 全国行政相談委員連合協議会

会長 鎌田理次郎

 

 

 

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