★予想外の反応
公演では全国各地を巡る。各地域によって子ども達の反応が違うという。当然ながら海外では、その差はさらに大きいはずだ。
「海外はとにかくノリがいいんです。『しらゆきひめ』の公演では、魔女が登場する場面で、客席にも下りていく設定になっていたのですが、本番中に役者が舞台のそでに来て、“今日は客席へ行かないほうがいい”と私に訴えるのです」
つまり、子ども達が物語の世界にあまりにも、入り込んでいるため、客席まで行けばどうなることかと、異様な殺気を感じたということだった。逆にいえば、演じる側としてこんなに嬉しいことはない。
ある都市では、こんなエピソードもあった。魔女がローラースケートで軽快に走るシーンがある。日本での公演だったら、悪い魔女へのヤジがとんできそうな場面。ところが会場から盛大な拍手が沸き上がったという。
「たとえ悪役であっても、カッコイイと思える場面は、文句なしに“ナイスショー!”と褒め称えるのです。こちらとしては、まさかそんな場面で、拍手喝采をもらえるとは全く予想をしていなかったので、本当に驚きました」
★人形劇の魅力
表情豊かな等身人のぬいぐるみ――。カッパ座の日玉の一つでもある。
「自然な目の動きを大切にしています。人形が自然にまばたきをすることで、観る側は安心するからです。そうすれば、余計なアクションをあえてする必要はありません」
人形劇そのものに“自らの生き甲斐を感じている”と語る古市氏。
「子ども達をできるだけ参画させる演出を心がけています。だからリハーサルは、実際にお客さんがいないと進まないんです。じっくりと劇を観てもらうことも大切ですが、カッパ座では、皆でお祭り騒ぎをして、そこから何かを感じとってもらいたいという願いが根本にあります」
ある公演での出来事。赤ちゃんを抱いた母親が開演後5分も経たないうちにホールの外に出てきた。あまりにも大きな泣き声を出したため、周囲を気にして外に連れ出したらしい。その様子を見た古市氏が声をかけてみると、母親はこう語り始めた。
「私が小学生の時に、カッパ座の『しらゆきひめ』を観ました。しらゆきひめが井戸に落とされそうな場面で、客席から一斉に“ダメー!”と声を出し、その声に気づいて、命拾いをしました。すると、こちらを向いて、“お友達ありがとう”とお礼を言ってくれたんです」
子どもの時に観た公演で、しらゆきひめを助けたら、自分のほうを向いてお礼を言ってくれた。その感激が大人になった今でも忘れられないという。我が子にも観せたいという熱い思いで、公演に訪れたそうだ。
★子どもの夢を共に創る
古市氏はカッパ座設立以来、今日まで人形劇の世界において第一線で活躍している。いったい何がここまで古市氏をひきつけるのだろうか。
「それは芝居をする仲間がいるからです。一つの目標に向かって、共にやっていこうとする仲間の存在が一番嬉しいですね。カッパ座の人形劇が、子どもに何かしら良いものを与えているという静かな喜びを感じています。そんなに大それたことをしているわけではないですが、“子どもの夢を創る喜び”だけで今まで続けてこられたように思います」
人形劇を通して、良いことは良い、悪いことは悪いと発見しながら、はっきりと表現していくことを伝えていきたいという。
「将来を担う予ども達に、相手を思いやるやさしさ、心の豊かさをプレゼントしていきたい」と古市氏は目を輝かせた。
■劇団カッパ座
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