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(10) B君、一泊二日の修行の旅へ

中学一年二学期が始まった九月、突然学校からBが登校していないし、家へ連絡すると学校へ行ったと言うのでという電話をいただき取るものも取りあえず学校へ急行。妻も勤務先から急行し、制服姿でカバンを持って家を出た事、二学期になって学校内で友達に物を売ろうとした事、の二つが判明。取りあえず家に帰って様子を見に行った妻から、鞄は近所の誰も住んでいない家の庭にあった事、母の自転車の上に置手紙を発見し、持って来た。それには、今まで育ててくれた礼と、これから三ヵ月程修行の旅に出るので心配しないでいい事が記されてあった。思いおこせばその夏、高知へ家族旅行の帰り、少林寺拳法の開祖である宗同心の話がラジオから流れていた。それは、親のいなくなった宗同心が中国の叔父のもとで修行し、立派になって帰って少林寺を作ったという内容であった。宮本武蔵を読み、六年生の家族旅行は伊賀上野への宿泊を望んだBにしては一連の強いものへのあこがれが幼い時からあった。とうとう修行を実践に移したまでである。行先はどこじゃろう。と心配する学校の先生や妻に、「少林寺へ行くと思う。」と拳法の指導をして下さっている先生からBという子が「今、家を出て向っている。お金を持っていないので着いたら温かく迎えてやってほしい」との連絡をしていただくと同時に私は四国へ向う準備をした。

 

 

 

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