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私達が里子の意見を聞くということと共に、里子同士の交流の場も必要かなと考えます。そういったことを里子達がどう考えているのか、もし望むならばそれを実現していくお手伝いをしなければならないのかなと思います。

新しい動きのもう一つのこととしては、里親を幅広く活用することです。これは先程の関東ブロックの里親会を通して行なった調査で、登録している里親の44%、約半分が「まだ子どもを預かれるんだ」と答えていました。里親さんの中には、養子縁組をして、これで私の目標は達したという人もいますし、あるいは自分も高齢になってきたから、これから子どもをあずかるのはちょっと無理だという人もいますけれども、半数弱の人が「さらに子どもを預かれる」と答えていました。その預かれる子どもの、例えば年齢ですとか期間というのは様々でしたが、これは考えてみれば、むしろ子どもの幅広いニーズに応えられる社会資源であると言えるでしょう。従来多かった、小さい子どもを長期に、できたら養子にという預かり方だけでなく、短期の養育、あるいはお正月や夏休みの期間の数日間預かる、あるいは週末だけ子どもを預かる、そういったようなかたちも、これからもっと拡がってくるのではないでしょうか。そういった意味では、最初にお話した子育て支援、現在非常に子育てが大変に難しくなってきていますけれども、里親が子育て支援を担うということも大いに可能なのではないかと思います。

最後に、「まず語り合うことから」ということで、まとめのお話をしたいと思います。やはり里親制度というのはもともと開かれた養育の仕組みだと思います。日本では養子縁組を希望する人が多くて、そのために他の人に知られたくない、自分達だけで育てるという望みがありますが、里親制度の本来の目的というのは開かれた養育で、その「開く」というのは親族に、あるいは地域に、あるいは子ども自身に、ということだと思います。里親であることを語っていくということが必要だと思います。これも先程の調査結果ですが、里親制度を「どういうところから知ったか」ということを聞いてみると、多いのは市町村等の広報誌ですが、意外に多かったと感じたのが、「身近に里子や養子を育てている人がいた」という答えでした。これが15%位を占めていました。そういった意味では里親制度について語っていく、これが里親制度自体を広めていくことにつながっていくと思います。また、告知の問題ですが、委託を受けた時を第一の出会いとするならば、告知は里親・里子という関係を認識して、新たに親子として生きていく第二の出会いと言えるのではないでしようか。

里親が行なっていることは、生活を共にして子どもが育つのを助ける、こういう当たり前のことです。ですが、それぞれの歴史をもった人間が新しい関係を作っていく難しさはあるわけです。いかに支えていくか、あるいは支え合っていくかが大事で、養育の工夫については、同じような経験を積んでいる里親会が大きな力を発揮すると思います。里親も、それから今日参加している皆さん方も、専門家として、法律的にどうかは別にしても道義的には守秘義務があります。自分を語る上で、自分の体験を語るのはいいでしょうが、子どもの内面については配慮する必要があるかと思います。

語ることは自分の心を開いていくことだと思います。自分の心を開いて初めて他の人達との心とつながりができるのではないでしょうか。ちょうど時間になりましたので、これで話を終わらせて頂きます。御静聴ありがとうございました。

 

 

 

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