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3.2.2 浮体の移動性を考慮した簡易係留方式

浮体の持つ移動性を活用したものとして防災浮体が検討され、既にいくつか配備されている。防災浮体は災害時に必要な場所に移動して係留することが想定され、通常時の係留状態における安全性と速やかな離脱が要求される。現状ではこれに十分に答えられる係留方式はないと言って良い。

移動性確保に最も有利な従来の係留方式としては、作業船の係留によく用いられているスパッド方式がある。まず、このスパッド方式に着目したが、スパッドを上下する機構は大がかりなものであり、防災浮体等に従来の機構をそのまま用いるのは不具合が多い。また、スパッド方式は比較的限界自然条件が低い難点がある。いくつか検討の結果、本研究では簡易に取付け、設置できる方式として、リンク方式係留に着目して、具体的アイデアを検討することとした。まず、以下に示すような機械的なロッドやリンク装置を用いた従来の装置・機器を調査し、アイデア検討の参考とした。

(1) 貯蔵船のロッド係留装置(図3.2参照)

上五島石油備蓄基地の貯蔵船縦方向係留に用いている方法である。

(2) 石油生産設備のヨーク係留装置(図3.3参照)

浮体式石油生産設備、貯蔵設備の一点係留システムの例であり、ヨーク装置が多用されている。係留ブイと船体とが、ヨーク(Yoke、くびき)と呼ばれる三角形の平面トラス構造によって連結されている。ヨークの船体側はピンによりヒンジ結合されている。

(3) トラクタ・トレーラの連結装置(図3.4参照)

トラクタとトレーラの連結装置で、着脱が容易にできるように工夫されている。牽引力は一本のキングピンで伝達されている。比較的簡易なシステムで、信頼性も十分にある。

(4) MOB(Mobile Offshore Base)で連結装置(図3.5参照)

本浮体システムはまだ研究段階にあるが、複合浮体であり、海象条件に応じて連結・離脱が可能なように考えられている。提案されている一案として、中央部でユニバーサルジョイント結合され、左右端でばね結合されるコンセプトが考えられている。

 

 

 

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