あいさつ
浮体構造物は、海水交換性により環境への影響が小さく、地震に強いことから、浮体構造物を活用して海洋空間を有効に利用していくことが期待されています。しかしながら、現在のところ、管理上の問題等からその主な利用は浮桟橋等に限られており、その適用の範囲を拡大するためには、耐食性に優れた管理の容易な、かつ、経済的に優れた構造物の開発が、近年、公共投資の効率的運用が求められている中、喫緊の課題として求められております。
このような状況の中で、(財)沿岸開発技術研究センターは、平成12年度から2ヵ年の計画で、耐食性に優れた新材料と鋼とのハイブリッドによる軽量化技術を確立し、また、この「浮体」のもつ移動性を考慮した係留技術を確立するための研究を行うこととしました。
本年度は、新材料の中から超軽量コンクリートを選出し、この浮体構造物への適用性について確認するため、理論的な検討と施工試験を行いました。また、係留技術に関しては、幾つかの係留方式の中から、理論的な検討を行い、ヨーク・バネ方式を提案しました。
次年度は、本年度の成果を基に、超軽量コンクリートを用いたコンクリート部材の力学的特性を明らかにし、施工性、耐久性を確認し、その対応を踏まえた設計手法にまで言及する予定であり、また、ヨーク・バネ方式の係留方式については、水槽試験を行い、その性能を検証することとしています。
本報告書は、平成12年度の成果をとりまとめたものです。本研究の実施に当たっては、早稲田大学理工学部の清宮教授を委員長とする委員会を設置し、そのご指導のもとに研究を実施しました。また、本研究は、三菱重工業(株)のご協力の下に実施されました。これら関係者の方々に心から謝意を表します。
平成13年3月
財団法人 沿岸開発技術研究センター
理事長 井上興治