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なぜかというと、こういうところに行って、そういう分析を頭の中に、いろいろとするというのは、基本的には普通の生き物というのは、別に人間に限ったことではなくて、仮にここで暮らしていかなきゃいけない、あるいは生き延びていかなきゃいけないということは、まず自分の身を守らなければいけない。それから、食べていかなきゃいけない。それから、安全な住みかを確保しなきゃいけない。そういうさまざまな条件というものを整理しなきゃいけないわけですね。そうすると、この環境の中には、どういう営みがあって、どういうメリットあるいはデメリットがあるのかということを、常に動物というのは考えていたはずです。例えばカニであっても、自分が死んでしまったら、元も子もないわけですから、日常的にほかの個体だとか、もっと単純には、ほかの異性とも会わなきゃいけないとか、要するに、いろいろな関係を整理して、自分の身を守っていかなければいけないということになりますから、そういう関係を分析しようという習慣は、別に大脳が発達した人間だけの問題ではなくて、意識している、していないにかかわらず、基本的に動物が持っている本性だろうと思います。

ですから、よくよく考えてみると、私たちは、単純に動物をやっていることを、もうちょっと理論的に、いかにもわかったふりをして、言葉という媒体を使って発表して伝達しているに過ぎない。そう考えると、次のステップに行きますけれども、環境学習というのは、よくよく考えてみれば、人間が、この地球上で生物として進化してきたプロセスの中で、当然持っていたいろいろなものの関係というものを理解する一番単純な−−と言っては怒られるかもしれませんけれども−−やりやすい学習ということにもなるかなと。ですから、その中で一番大事なのは、自然の中でどれだけの情報を発見するか。そういういろいろな関係だとか、あるいは関係から整理した将来の変化の予測とか、頭の中で、どんな現象をシミュレーションできるか、類推できるか。そういったところが一番、環境を使って学習する場合のねらい目かなという感じがします。

ですから、複雑で、かつ、いろいろな生物がいて、理解しやすいような場所で、環境的なものを、いろいろな体験をしてもらうということは非常に重要な活動です。これは別に文化人としての活動とか、そういうんじゃなくて、単純に生き物として、人間がものを考えるときに非常に重要なやり方じゃないかなということを、今日、改めて、皆さんのお話を伺わせていただいて感じました。ちょっと理屈が長くなりましたけれども。

今日は干潟の話になりますけれども、かつての東京湾に、これは昭和元年の東京湾ですけれども、東京湾岸中、ずっと干潟だったわけで、東京湾にとって干潟というのは、ごくごく当たり前の海岸だったわけです。ところが、最近では開発がどんどん進んで、干潟だとか、浅い部分というのは、こういうところにちょこちょこと残っているに過ぎない。先ほどの写真は、ここの木更津の盤洲干潟の河口のところの写真です。

 

 

 

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