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これはマテリファダムと言いますが、このダムを壊そうという話が進んでいます。私は今国土交通省に所属しているからそういう話はやめた方がいいとか、長野県のそういう話とは全然別です。彼らアメリカ人はこの問題を冷静に考えていて、実はこのダムのちょっと上流を見てください(写真46)。こういうふうに上流は砂漠地帯です。そうすると、レンタカーで走り回ったんですけれども、ここでは年間200mmぐらいの雨しか降りません。しかし、山に木がないのでそれによって大量の土砂が湖に流れ込みました。そうすると、写真47のように大量の土砂が堆積しました。それで当初、貯水量が600万m3と言われたダムなのですが、その80%がこういうふうに砂礫で埋まってしまったのです。一方、この川にはカリフォルニアの山間地にのみ生息するマスが住んでいたんです。そのようなマスの生態を調べる人もいて、こういうふうに土砂がたまった状態になってしまったものですから、これは元に直そうよというような話が起こりました。

山と海をつなげるのが川です。川は土砂を運んでいます。土砂とは土と砂ですよね。人間の体と同じで、土砂というのは国土の血流なんです。人間の体には血液が回っているでしょう。それと同じことが地球について言えます。これは血流なんです。物質がこの流れによって海へ流れるのです。人間で血の流れが悪くなり、1カ所にとまると、どうなりますか。脳血栓ですよ。ですから、この写真は脳血栓の状態を表わしている訳です。くれぐれも長い時間スケールで見ると、人間の体が死ぬのと同じことが国土に起こるのです。そういう見方をするというと、例えばダムの記事を読んでいても、僕は、医学の新聞記事を見るのと同じ風に見えます。ちょっと思考を変える、視点を変えると、事の重要性が分かると思います。

それで、下流側では写真48のようになります。これはクリークと言うんですけれども、大岩が出ちゃっています。元は砂をかぶっていたんですけれども、上流側から砂が流れて来なくなった。このためここの生態系が壊れてしまった。彼らは何とかしようということで、いろいろなトライアルを今やっている最中です。まさにやっているところです。

それで川の流れは、写真49のように海にたどりつきます。川が流れ込んだ先は、写真50のようにジョギングコースがありましたが、そこでは陸地が深く削られている。さらにその先へ行くと、写真51のように陸地がどんどん削られています。それから写真52は泊まったホテルから見たもので、写真50・51に示したヤシの林の前の状態です。

それで、これは最も言いたいことの1つなのですが、日本の海岸は、どこもかしこもコンクリートの山じゃないですか。どこに行っても。最もすごいのは新潟県や静岡県でしょうか。どこもそういうコンクリートの山になった所ばかりです。でも、それは日本だけの現象で、外国ではそうではない代りに自然の状態のままの海岸が残されている。

本日は話ができませんでしたけれども、カリフォルニア南部のサンディエゴなどでは、こういう場所もあるのです。環境学習のために、ある地域についてはシュノケールで潜ってもいいと。そこには魚や海草がたくさんいます。しかし、獲ってはいかないでくださいと書いた看板があるのです。皆、それを守って、親子連れで、そこで潜って帰る人がたくさんいます。海では触れはしますが、そのまま置いていくのです。そういう訓練を小さいときからやっているのです。ですからここで皆で署名でもして、そういう具体的な場を造り出すということを、本当に早くやらないと日本はどこもかしこも埋め立てられてしまって、あるいはコンクリートだらけになってしまって、少なくとも海に行く限りは全然ピントがずれてしまうという危険性がある状態のもう一歩手前まで来ていると思います。

 

 

 

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