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欧州の統合的沿岸管理戦略に向けて

―地中海におけるフランスの貢献―

 

イブ・エノック

 

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ありがとうございます。まず最初に、今回ご招聘いただきまして、このように皆様と話す機会をいただけたことを心から御礼申し上げます。特に日本財団の寺島常務理事をはじめ関係者の方々には改めて感謝申し上げます。

今日は、ヨーロッパでの持続可能な開発や沿岸管理について、フランスの事例などもご紹介しながら洞察をしてみたいと思います。そのような理由で本日の講演のタイトルを選ばせていただきました。

まず最初に、お知らせがあります。悪いお知らせもあります。これはヨーロッパのエコノミスト誌で、グローバルウォーミングつまり地球温暖化の記事が出ております。京都でのCOP3会議から3年が経過して、現在、オランダのハーグでのCOP6が開かれておりますが、その記事が出ています。この記事はたまたま掲載されたわけではなくて、地球温暖化というものが現実の問題だからであります。科学的な議論というのはまだ行われておりますけれども、我々は地球温暖化を本格的に考えなければなりません。また、それが海面上昇や海水の温度上昇にも影響するということを考えなければいけませんし、生態系、そして特にサンゴ礁などへの影響も考えなければいけません。

そこでまず、思い出していただきたいのです。京都会議の際にいわゆる温室効果ガスの排出水準を1990年水準と比較して5%下げようという公式な合意が得られました。しかしこれについては悪いニュースですが、この温室効果ガスの実態がその後ヨーロッパでどうなっているかというと、結果は決してよくありません。1992年のレベルと2010年のレベルとを比較いたしますと、55%上回っていることが既にわかっております。ですからまだやらなければならないことはたくさんあるわけで、非常に効率のよいツールがないと、持続可能な開発は実現できません。

このように将来どういう影響があるかを示している指標を見てまいりますと、かなり暗い見通しになっています。これがヨーロッパ、ECの実情です。温室効果ガス、オゾン層の減少、そして有害物質、大気汚染、水質汚染、土壌の劣化、廃棄物、それから技術リスク、天然のリスク、遺伝子操作された生物などは、生物多様性、人間の健康、都市地域、そして我々の本日のテーマであります海洋や沿岸域などに、かなりの負担を強いています。そしてそのかなり部分が未知であるということがわかります。といいますのは、まだデーダが不足しているからであります。現状がどうなっているかということが、沿岸海域に関して、海洋に関してわからない点が多いということです。

 

 

 

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