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したがって、海洋法の変動は国際社会構造の変動と密接に連動しているという認識が必要だということであります。第2次世界大戦まで日本が先進諸国の後を追うようにして海洋自由の利益を享受できたのも、それを是認する国際関係構造が背景にあったからでありまして、第2次世界大戦後の急速な国際社会の変化、その海洋法秩序への影響にもかかわらず、主として遠洋漁業の利益を擁護するため、日本は伝統的な海洋法分野の諸原則にだけ固執した面があったと思います。国際社会における経済的な関係、社会的関係の相互依存化が進むとともに、地球空間が社会全体の価値を追求し実現する場として把握される傾向にありますけれども、そこで問われているのは、国際協力という概念であるとともに、いかに海を管理していくかという命題であります。そういう意味では今後もその方向性は見失ってはならないと言えます。

第2に、第3次国連海洋法会議の初期における日本の外圧を利用しようとする姿勢とか、最近の漁業協定に至るまで見受けられる日本の対応ぶりには、外から見ていますと、確固とした方針に基づく一貫した方向性が見られない。個別的な対症療法的態度が見え隠れしているところがあるように思います。確かに周辺諸国には発展途上諸国だとか社会主義諸国などが多くて、日本を取り巻くそうした国際的な環境を考慮しますと、そういった個別的対応もやむを得ない面があるかもしれません。それらの諸国とは決して同一のスタンダードで規律できないような問題、いわゆるダブルスタンダードなどの基準も介入する余地がありまして、極めて複雑な事情を抱えているということも事実であります。今後は日本一国だけの管理だけではなくて、オーストラリア、ニュージーランドも合めた広く周辺諸国といかに協力していくか、これが重要になるというふうに考えられます。

第3に、これからの海洋秩序が管理だとか協力という理念に先導されるということであるならば、今後、国際的合意を形成していく上において、決して科学万能主義と言うつもりはないし、またそれは唯一のものではないとしても、説得力ある基準の1つは科学的な知見や基準に求められると考えられます。海洋についてはまだ多くの部分が未知であるということは周知の事実でありますけれども、海の持続的利用の方向へと指向していく中で、何が諸国民の行動のガイドラインとなるのか、より合理性、説得性を持つ準則がますます要請されてくる。国民生活の多くの面において海に多くを依存してきた日本にとって、海洋に関しては、非常に長い経験、すぐれた科学技術を蓄積しております。諸外国、またアジアを含めた諸外国との協力関係の中で、そうした国際的行動のための援助と指針づくりに貢献するということが期待されると思います。

第4に、最後に海洋問題は相互に複雑に絡み合っております。私が常々述べておりますように、現代社会の生み出すさまざまな問題と同じように、海洋問題も総合的な取り組みが強く要請されております。既存の縦割り型行政のあり方では、総合的な海洋政策の策定は極めて困難である。政策決定の統合化を図って、21世紀における国家目標として、海との共生を目指す基本的方針を打ち出す。これによって国際社会における海洋秩序の形成に日本が積極的な役割を果たす。これが今望まれているような気がいたします。

ご清聴ありがとうございました。

 

 

 

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