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第3次海洋法会議の頃はもっともっと我が国の国内に熱気があったと思うんです。それが十年余を経て、条約が発効したころにだんだんガスが抜けてしまいまして、停滞してしまったというのが率直な印象でございます。これは海洋法条約をつくるときに携わっていた方々は、みんなそんなふうにお感じになっているじゃないかと思うんですけれども。各国の対応はむしろ条約がそろそろ発効するから、さあ頑張ろうというふうになっているときに、ちょうどそれと逆行しているので、非常に目立つというのが率直な感じです。先ほど来ボルゲーゼさんが言っておられますように、海洋の問題は相互に密接に関係するので、全体的な視点で議論しなければいけないということで、国連総会でまず議論する、事務総長の報告などにそれをどんどん取り上げていく、そのために非公式協議プロセスを設けて議論の整理をして準備をしていくということになりました。これは政府レベルだけでなくて、関連するNGOを含むいろんなレベルが参加して議論をしていくようにするという方向へ進んでいるようです。ですから、グローバルなレベルで我が国はどうやって対応するのかというのは、これは一般的な問題ではなくて、当面の大切な問題です。国際的に、グローバルなレベルでどう対応するのかということについて、我々一人一人がもっと考えて、かつ協力をしてやっていかなければならないのではないかというのが、感想の第1点でございます。

第2点は、リージョナルな取り組みなんですが、ご承知のように、海は広大であり、海でよその国とつながっているわけです。ごく限られた、小さな海は自国の中にもございますけれども、一般的に海はそういう意味でリージョナル、あるいはインターナショナルな性格を持っているわけです。そういう面で考えたときに、やはり現在の日本の取り組みはリージョナルな取り組みも非常に弱いのではないだろうかと思います。これは海上交通の問題につきましても、また今、日本海、黄海でやろうとしているNOWPAP(北西太平洋地域海計画)の取り組みにいたしましても、これはようやく緒に就いたわけですから今までよりは取り組みが進んだとは思いますけれども、ちょっと取り組みの勢いが弱いという感じがいたします。もっと隣接の国とどうつき合うかというのは、海の問題としても非常に大きな問題だと思うんです。ほとんどつき合いがないというのでは、やっぱり日本の安全保障にとっても、あるいは日本の発展にとっても具合の悪い話ではなかろうかと思いますので、まず海の分野で是非リージョナルな取り組みを強化していく必要があるんではなかろうかと思います。

最後にナショナルな問題ですけれども、対外的に日本のプレゼンスを発揮するためには、ナショナルな部分がしっかりしていないとできないわけでございます。国内的にもいろいろな問題を抱えていると思います。先ほど来、国内での調整をどうするのかというような議論がいろんな方々から出ておりました。一つの省にまとめたからといって、うまくいくわけではないという厳しいご意見もございました。ただ、私は行政組織の議論と同時に、それに取り組むための基本的な考え方についても、やはり政府でまとまった、統一された考え方をつくっていく必要があるんじゃないかと思います。海洋政策の策定が必要です。海洋政策の内容とまとめ方についてはいろいろ議論があろうかと思いますが、ぜひこれは行政の方々にお考えをいただきたいと思います。

同時に海の問題は、政府だけではなくて、今度は国内でもNGO、民間部門、そして最後は最終的な利益の受益者である国民、そういったところを巻き込んだ対応が必要だと思います。

 

 

 

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