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そから2番目。これはさっきイーラー先生も言ってましたけど、「環境調停を行う専門家集団の養成」というのは、これは私も行政にいますから、行政が不埒なことをやっているということではありません。個々人はみんな一生懸命働いている。ただし、行政の中だけではできないこともあるんです。それは市民と行政の間はどうしても対立関係になってしまって、本当の理解ができないんです。そうすると、そういう意味でいくと、上嶋さんも言っておられたけれども、ある種の専門家集団というか、中立的に、行政と市民の間にいて、本当に海をよくしたいというそういう人たちでつながったようなそういう集団がおって、議論をしながら公開でやっていかないと、駄目なのではないかと思います。

それから3番目、「専門技術者の教育の在り方論」で、これは莫大な数の土木の卒業生がいま仕事をしているわけです。これは、たとえば偏微分方程式を解く、数値計算をする、そういうのが好きだから、そういう人たちがたくさん来るわけですよ。ところが今我々に与えられた問題は、「いかに安く速く造りますか」と言われているんじゃなくて、普通の人から「なんでつくるの?」、「本当に必要なの? やらない選択もあるんじゃない?」と問われているんです。ということは結局、哲学的な問題に対する認識力を持った人間を育てていかなければだめなんです、どうしても。そうしないと、目先のことをやるのは便利だけれども、だから戦術論で目一杯がんばったって、結局大局から見たら「何やってるんだ」という話になりますから、その辺のところで、きょうは先生方も多くおられるんで、私先生じゃありませんけど、やっぱり本当の意味の教育論というのか、そこをやったらどうかなという提案です。

それから4番目、「行政に良き緊張感をもたらすための市民参加」といって、これは中央省庁が透明性行政だとか、双方向性行政だとかそういうことを言っていても具体的には何も変わらないんで、そうではなくて、個々の具体的な実例について、本当にやる気があるんなら透明性をやって、行政がある情報を与えて、それに対して市民レベルがどんどん水準が上がってきて、行政のやる人が、これは負けてたまるかというぐらいの緊張感があるような、そういうような、個々人が別に悪者という意味じゃなくてそういう意味の緊張感を持って仕事をすれば、自ずといい方向に向かっていくだろうと思うんです。だから、良き意見は採用すればよいし、よく自分たちで勉強して、住民に何か言われたら、ぐちょぐちょっとなってしまうのは、どこか論理がおかしいところがあるからで、そこらをきちっと勉強するには、良き緊張感というか、そういうものが必要であろうと思います。

それから、「学識経験者も発言に責任をとる仕組み」って、えげつないことを言いますが、これは特定のことを言っているんじゃないです。本当に国全体の、あるいは国民レベル全体を見るんであれば、自分の出身母体とか、そういうことだけをwatchしていく限りにおいては、これは全体は沈んでいってしまうだろうと。私は学識経験者じゃないんで、あんまりそういうことばかり言うわけにはいかないですが、公開したらいいと思うんです。自分はどういう見地からこういうふうに考えたので、こういう意見を言ってますというように。特に莫大なお金を使ってやる公共事業については、自分のスタンスというのをきちっと公開をする。そういう癖をつけるというんでしょうか、そういう社会になっていく必要があると思います。

それから6番目、「技術者の社会貢献」、これは上嶋さんも言っておられたけれども、ちょっと一時代前の技術者には、こういう方が結構たくさんいるんです。住民参加は求めるけれども、どうせ彼らはよくわかっていない、だからそんなやつらには言いたいだけ言わせて、こっちへ置いておけと。

 

 

 

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