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保護されるサイトが各地にありまして、全体で420サイト。海岸線にして約800キロメートルを環境庁が土地を買っているという形態です。もちろんこれとは別にフランス国内にはナショナルパークはきちっとあるわけです。それ以外にこういうように土地を買っていく。じゃあ、なぜそういうことをしているのかについてお話ししていきたいと思います。

沿岸域保全機構の中で、一番の哲学といいますか原点は、「自分たちがその土地を持っていないとそれを有効に活用できない、管理できないという考え方」で、このような考え方をきちんと徹底して沿岸域の自然を保護しています。先ずは土地の所有が第一である。土地をきちんと管理しなければ環境は管理できない。ですから、海岸については1,000ha以上のところを対象にして国が土地を選んでいく。そのときに市町村の代表者たちと、どこの自然を守るべかということを相談しながらやっていくということです。また、土地購入の方法とか財政についてはきちんと用意されておりまして、その中で買っています。だいたい購入する予算は年間約1億フラン――約20億円から25億円ぐらいでしょう――それを元に買っていきます。1m2当り33フランといっています。約70円/m2で土地を買えるというのは、これはすごいことです。

どういう場所を買うかというと、これから観光開発等で荒らされるようなところを先ず政府は買っておきます。それから農地等が荒れているところを買って、そしてそれを今まで通りの昔風の農業あるいは漁業のあり方を継続していきます。ブドウやワインのつくり方あるいは、伝統農法を従来どおりの方法でやっていくということを位置付けております。

それから、土地の購入をする中で、やはりパートナーが必要となります。それは市町村の代表者、一市町村から最低一人は出て理事になっておりますけれども、約200〜250ぐらいの市町村がそこに参加しているということですね。

この機構の中に強力な組織として、Rivageというのがありますが、これが面白くて、Rivageというのは政府から来る人たちもいるんですけれども、市町村代表、科学者、企業、それからNGO等が集まって、サイトをどのように管理していくかなど、そういうような動きがあります。

どのような土地を買っているかというと、一番多いのは岩場です。岩のところをかなり買っている。それから砂地の海岸、あるいは湿地帯ということで、景観のいいところはきちんと買っていこうということでやっております。

あとは、やはり大西洋側よりも地中海のほうが多いということ、それからどれぐらいのお金で買っているかということなんですが、ここに78%が交渉買収ということでやっておりまして、いくらで買うかどうか、機構が権限を持ってやっているということです。

どういうサイトかについて例を挙げたいと思います。ノルマンディーのほうなんですけれども、大西洋側ですね。実はこの活動に対して企業がパートナーシップになっていて、たとえば石油会社あるいは電力会社が、サイトの沿岸手帳というものを発行します。分厚い本を無料で来る人たちに配ったりしております。また、ガソリンスタンドヘ行けば、エコロジーマップというものも無料で配布されてくるということで、電力会社あるいは石油会社という公共性の高いところが、こういうものに対して非常にバックアップしているというのが実態です。

 

 

 

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