日本財団 図書館


さて、アメリカのチェサピーク湾、先ほどご説明がございました。その中で沿岸域管理法に基づいて最も代表的な一つのプロジェクトというのは、チェサピーク湾計画、いわゆるCBPではなかったかと思います。私たちもそこと共同研究で観測に行ったりしておりますけれども、やはりどういうシステムで環境管理をしていくかということが重要になってきます。このCBPの活動で一番感じたのは、NGOあるいはボランティアの方々が中核になって、非常に環境管理に対するgovernanceといいますか、統括的な管理をやりながら、実行し、さらに評価を行っている点です。私は政策とか制度化があって、それを実行する側の母体があって、その中に市民があると思っているんですが、その母体の層が日本にはないようです。そういう中間的な組織体が不足しているのではなかろうかということで、地域でいろんな環境基本計画等をつくる上でそういうことをお話ししてるんですけれども、やはり行政と市民をつなぐ中間的な組織体そのものが一つの環境を管理していく上で重要ではなかろうかという気がします。

また、フランスの地中海に関連するものとしては、かなりたくさんの環境プロジェクトがなされております。地中海ではMAPが非常に活躍しておりまして、その一環としてブルー・プランBPというのがございます。地中海全体で21カ国あるんですけれども、たぶん19カ国ぐらいBPに参加して、そして地中海の未来をシミュレーションして、それに対してネガティブなものは前もって予防していく。人口問題も産業問題も、あるいは環境問題も、すべて予防していくというような考え方がございます。我々ももう少し予測といいましょうか、そういうものをしっかりとやっていく必要があるのではないかという気がしております。

さて、きょうは話題ということでお話ししたかったのは、やはり環境というものを我々の生活の中に入れてゆくためには、いわゆるボトムアップでなければなかなか身につかないということが多々ございます。私も瀬戸内海のいろいろなところを観測したり、あるいは住民の人と一緒にいろんなことを話し合ってきていますが、そういう地域のregionalな一つの範囲の中でも、そこにおられる人たちの理解あるいは環境に対する啓蒙がなければいけないだろう思います。言い換えれば、環境に対するいろいろな教育なりあるいは学習なりというような形態が、あるいはシステムが非常に不足していると考えます。そういう意味で、今日は、手本とする例といたしまして、フランスにございます「沿岸域保全整備機構」というのがあります。先ほど最初にお話があった、ボルゲーゼさんの講演の中で、「フランスで素晴らしいものがあるよ」と言ったのは、たぶんこのことだろうと私は思います。市民が環境に対して、いわゆるボトムアップ式に一生懸命取り組んでいる。いわゆるNGOあるいはボランティアが一生懸命やっているというのが、この沿岸域保全整備機構だと思います。これはフランス風のナショナルトラストと言っていいかもしれません。もともとナショナルトラストというのは、イギリスで100年前に出来たもので、それに類したものはオーストラリアとか、あるいはオランダ、カナダ、アメリカと広まっていますけれども、フランスの場合は環境庁が土地を買って、そして、それを市町村に与えて、市町村が管理していくという中で、その中にはいろんな市民が参加して管理している形態について、今日はちょっとご説明しようかと思いまして題材に選びました。

いま現在ナショナルトラスト的なものとして土地を保有されているのは約6万haございます。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION