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2003年、まだ先ではありますけれども、この年はアメリカが排他的経済水域を宣言いたしまして20周年――アメリカだけではなくて他の国もそうだったのですが――にあたります。これだけの事を我々は20年間でできたんだと、ちょっと感慨深い思いもいたします。

さて、簡単にまとめの話にいきたいと思います。これは現状のシステム上の問題であります。先ほども既にふれたところもあるのですが、一つ大きいのは、皆さんも同じかもしれませんね。やはり日本も今後どうあるべきかということを考える上でぜひ検討していただきたいんですけれども、アメリカでこうした問題があるのです。先ほど最初に「緊張がある」と申しました。すなわち政府の機構にはいろいろな各層がある。その間でせめぎあいがあるわけであります。日本でもそういうことがあるのではないでしょうか。分権が進んでいくと、さらにアメリカのように深刻になるかもしれません。アメリカでは連邦制度ということになっておりまして、相当の権限が州や自治体に与えられております。ですから、やはり管轄権をどう分けるかというのが大きな課題になっております。沿岸資源、それから生命資源、海洋生物資源というのは動くわけでありますから、どこからどこに、誰のものかというのがなかなか決められない。こういった資源をどう活用するのか。動くようなものだったら困る。それからまた権限とかそれに伴うコストが面積と比べてバランスがとれていないという問題があります。たとえば、石油とかガスの探査についても、やはり管轄権の葛藤があるわけです。

それからもう一つ、効果的に対応しなければいけない問題の一つとしまして、今でも苦労しているのですけれども、やはり部門毎にすべて管理されてしまっているという問題があります。たとえば海運の問題はここ、漁業はここ、観光はここ――観光はむしろ民間にまかせきりというところがあります。絶えず目的毎に管理がされてしまっている。特に国のレベルになりますと目的毎に対応しようということになってしまっておりまして、たとえば紛争が起こった場合に、それを解決するような一元的な機関がないわけです。NOAAが調整機関ということで紛争解決においては役割を果たすことになっているんですけれども、充分な権限を与えられているわけではありません。

こうした問題はすなわち、それぞれ自分の利益ばかり考えて、お互いに敵だというように見なしているわけであります。官対民、連邦対州、連邦対自治体と。そのような敵対関係がどうしてもあるわけです。どうしても敵対的なやり方になってしまう。法律家、弁護士を巻き込んで裁判ばかりやっているということになってしまう。やはりこれは対応を必要とする問題であります。

それから短期的な思考、これはやはりどこにでもアメリカだけでなくあると思うのですが、どうしても政治家や政策立案者というものは、ついつい短期間で物事を考えて成果を出そうとしてしまいがちであります。ですから、やはりもっと長期的な計画立案の必要性を認識して、この海洋・沿岸の問題に対応しなければいけないと思います。

また、ボルゲーゼ先生も海洋システムは非常に複雑で不確実性がつきものだとおっしゃいました。ですから、不確実性があるということを前提として、それによりよく対応するにはどうしたらいいのかということを考えなければなりません。そして予防原則でもって考えていかなければいけないわけであります。どのように問題に対応して、どのように前へ進んでいくかということになります。

 

 

 

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