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汚染および漁業管理の面では、地域レベルで最も円滑に解決できるものが多くあります。技術の開発・移転を強化する新しい方法、または持続可能な開発と人的安全保障を統合する新しい方法は、国連海洋法条約(UNCLOS)/国連環境開発会議(UNCED)で生まれた諸条約、協定、プログラムの効果的実施に不可欠なものです。そして、こうした新しい方法を最も円滑に導入できるのがこの地域レベルなのです。

グローバルなレベルでは、地元社会を含む「主要グループ」が持続可能な開発委員会(CSD)その他の国連機関の討議に積極的に参加し発言していて心強いものです。これこそ国際関係の民主化を促すもう一つの方法であります。

持続可能な開発委員会(CSD)の勧告を受け、以下の趣旨でいわゆる「海洋に関する国連の非公式協議プロセス(UNICPO)」が国連総会で設立されました。

「海洋の問題の進展に関する国連総会の毎年のレヴューを効果的、かつ、建設的な方法で行うことを促進するために、海洋および海洋法に関する国連事務総長の報告書を検討し、総会で特に検討する問題を提案する。この際には、政府間および機関間のレベルの調整・協力を強化すべき分野の明確化に力点を置く。」

UNICPOは、年1回1週間にわたって開催され、海洋の問題について討議します。これまでのところ、海洋を対象とする国連総会は年に1日と余りにも少ない期間です。UNICPOは、総会参加国、海洋に関連する国連機関、「主要グループ」の誰でも参加できるものであり、これも新しい海洋管理の構造におけるきわめて重要な基礎になっています。この度ニューヨークで第1回目の会期をかなりの成功裏に終了し、現在国連総会に報告書と勧告を送っています。国連総会には意思決定の根拠とするこれほど適切な資料はこれまでありませんでした。

このように、海洋管理のシステムは、整合性と一貫性があり、参加型でボトムアップの形を取りつつあります。生活の改善につながる、持続可能な開発を扱うのは沿岸の地元社会が最も適しています。国の政府は、地元社会と協力し、規制/立法面で役割を果たさなければなりません。漁業管理、海洋科学の振興、技術の開発・移転、監視と法の執行、持続可能な開発と地域安全保障の統合は、いずれも国家、地域機関、「主要グループ」が協力し、地域レベルで最も適切に対応できるものです。高度回遊性漁種、外航海運、気候変動、オゾン層の破壊、地域間の問題、システム全体の調整には、国連総会レベルにおけるグローバルな行動が必要です。

ここで、ガンジーの言葉を借りて、この「海洋管理」という新しい形を、個人から始まり、それが地元社会、国家、地域、国連総会へと広がっていく「海洋の円(circle)」にたとえたいと思います。ガンジーは、次の有名な一節で世界の社会秩序に関する自分の考えを語っています(「私の夢、インド」より)。

 

無数の村々から成り立つ構造は

悠久でありながら決して上昇しない円である

命は、底辺が頂点を支えるピラミッドではない

海洋の円である

 

 

 

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