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もう一つの死の問題というのは、癌による死亡者の増加でございます。最近の死因のトップは癌で、全体の約30%を占めております。三人一人は癌による死ということになるわけです。癌といいますと、痛みや苦しみを伴うもので、癌だけにはなりたくないなというのが、皆さん、どなたでもお考えじゃないかなというふうに思います。こうした以上2つの理由から、今、生と死というものに対して、個人的な側面から関心が高まっているんじゃないかなというふうに考えています。

そこで、これから限られた時間ではございますけれども、医療現場におられるお二人、それにエッセイスト、それに哲学者のデーケン先生含めて、各パネラーの方と意見を交わしていきたいと思います。

まずはじめに、生と死というなかで、死という問題と切り離せない医療現場におられるお二人と遠藤さんに、現在の職業、及びエッセイストになられたきっかけについて、まずお話をおうかがいしたいと思います。

最初に堂園先生から、よろしくお願いします。

 

堂園 皆さん、こんにちわ。私は鹿児島から長崎に来まして、幕末の志士のなかでいちばん好きなのが坂本竜馬です。坂本竜馬を育んでくれたのがこの長崎の町で、たぶん今回のこの講演会が私を育んでくれるんじゃないかと思いまして、勇んでまいりました。

私は、産婦人科を卒業してすぐ専攻しまして、とくに産科を専攻しました。生まれてくる子どもにたくさん役に立ちたいと。医者になって約2年目ぐらいに、10代、10歳前後で卵巣癌で亡くなる患者さんの主治医にたくさんなりました。そのときに尊敬する医者と出会い、それから癌の道に進もうと決めて、がんセンターに行き、勉強してまいりました。その後、母校に帰り、また故郷の鹿児島に帰り、大学で勤務しておりまして、父が倒れまして、急遽父の跡を継ぐことになりました。そのときにはベッドもない小さな小さな診療所で、大学の患者さんが私に最後を診てほしいということで、そのなかで在宅をしたり、デイケアをしたりしているうちに、病院をつくってくれという強い希望がありまして、「もう一回行きたい病院、そこで死にたい病院」というのをテーマに建物をつくりました。「家庭の中に病院の一室を」という在宅と、「病院の中に家庭の一室を」というモットーで医療をやっております。

それからもう一つ、特別養子縁組というのをボランティアでやっております。これは、高校生とか若い子どもさんが妊娠して育てられない、そのお子さんをどうしたらいいかということで、いろいろ相談に来られる方がおられます。

 

 

 

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