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さらに、EUは、EQUASIS(European Quality Information System)という、船舶の情報を一元的に提供できるシステムの構築を構想中であり、我が国としては、欧州に於ける海事関連の動向を視野に入れつつ、このような情報化の動きにも対応方策を検討していくこととしている。

 

(3)アジア・中南米対応

IMOにおいて、我が国は、アジア、中南米諸国の支持を得て、我が国の提案を通したり、欧米等の提案に対応することが多い。IMOが国際的な規則の策定の場であり、欧米対日本という意見の対立もあることから、今後我が国提案をIMOで実現するためには、IMOの場でこれらの国々と情報交換、意見交換を継続するとともに、日韓の検査課長会議や世界海事大学の日本が支援した奨学生とのつながりを今後とも継続し、これらの国々とのIMOでの連携した対応を確保していくこととしている。

 

4. まとめ

 

ここ十数年のIMOを取り巻く環境は、便宜置籍船の増加、地球環境問題の顕在化、様々な技術の進歩など大きく変わってきている。また、多数の人命が犠牲になる重大事故や大規模な油流出事故の発生により、安全・環境規制の強化が求められ、船舶の構造・設備基準の強化はもとより、船員に関する基準の強化や運航会社の安全管理を規制する新たな枠組みの構築などが行われてきた。

現在既に、IMOにおける各国の協力と貢献の成果として、数多くの基準や規定が整備されているが、残る困難な問題は、如何に条約に規定された様々な義務を全ての旗国に確実に実施させるかということであり、PSCの強化によりそれなりの効果が出てはきてはいるものの完全ではない。また、本来、旗国が行うべきことを確実に行わないので、寄港国がPSCをやむなく行っていることに留意する必要があり、旗国の確実な条約の履行の方策については、依然抜本策を模索中といった状況である。

一方、船舶からの大気汚染の防止やTBT塗料の世界的禁止など、国際社会が新たな取り組みをしなければならない分野については、条約採択にこぎつけても発効要件が従前とおり50%以上の船腹量となっているとなかなか発効しないという問題が生じている。世界の50%近い船腹量が既に便宜置籍船になっていることとの関係で、今後、条約の発効要件や条約の内容における便宜置籍国との対応等については戦略的によく考えていく必要がある。

また、今後予想される地域的な経済的発展の動向やOECD、IACSなどIMO以外の機関や組織の動きあるいはその役割を考え、海上の安全及び海洋汚染防止のためにIMOの役割、旗国の役割、寄港国の役割等を今後検討していくことが必要になってきている。

 

 

 

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