「ナホトカ」号事故の教訓をもとに我が国が提案していた、重油等の粘度の高い精製油を運搬するタンカーは、これまで30,000トン以上の船舶が原則船齢25年でダブルハル化することを要求されていたが、これを原油タンカーと同様に20,000トン以上の船舶とするMARPOL13G規則の改正が選択され、2001年1月1日から適用されることとなっている。
(3)TBTの世界的禁止に向けた新条約の策定
TBTの世界的禁止に向けた規制制度については、現在新条約の策定の方向でIMOで審議中である。本年6月に開催されたMEPC43には、我が国からは条約案の骨子が、米国からは条約案が提出され、米国案をベースにWGで審議が開始された。
一方、IMO理事会は、条約採択のための外交会議を開く案件が複数ある中で準備が整い十分成功の見込みがあるものに限り、2000年-2001年の次期会計期間に予算措置を講じる方針を打ち出していたため、MEPC43ではMEPCとして11月に開催されるIMO臨時理事会及びIMO第21回総会に向けて外交会議の開催を求めるか否かをロールコールボート(一ヶ国づつ順番に賛成か反対かを述べる投票方法)により決することとなり、結果賛成35、反対12、棄権15で外交会議を求めることとなった。
本年11月に開催された臨時理事会及びIMO総会では、次期会計期間にTBTの禁止に関する外交会議を開催する事務局原案が提出された。我が国はこの事務局原案を支持しMEPCの決定を尊重すべき旨強く主張したところ、多くの国がこれに賛成し、2001年にTBTを用いた船底塗料の世界的禁止に向けた外交会議を開催する予算案がが採択された。
また、同総会では、MEPC42及び同43で審議されて提案された、TBT塗料の2003年からの使用禁止/2008年からの存在禁止を達成するための強制文書の作成を求める総会決議が、我が国はじめ多くの国の強い支持により採択された。
我が国は、IMO臨時理事会及びIMO総会の審議において、我が国主張を有利に展開することも考慮し、本年6月のMEPC43に提出された米国案及びMEPC43のWGでの検討結果をベースに、来年3月に開催されるMEPC44に、本年6月のMEPC43に我が国から提案した条約骨子案に沿った条約原案を11月中に提出したところである。
(4)ばら積み貨物船の安全性に関するFSAの実施
ばら積み貨物船の安全性については、1997年のSOLAS条約締約政府会議でSOLAS第XII章が採択され、本年7月1日から発効しているが、英国籍ばら積み貨物船「ダービシャー」事故の調査結果を踏まえた英国からの強い要請により、ばら積み貨物船の安全性をFSAの手法を用いて検討することが決定されている。我が国は、ばら積み貨物船の安全規制は、我が国の海運・造船関係に多大の影響を及ぼすことから、英国を中心とするFSAの実施とは別に、我が国独自にFSAを実施して規制見直しの必要性を検討することをIMOにおいて表明した。このため、本年より検討を開始し、その成果を踏まえて、IMOの審議に対応することとしている。本検討は、FSAを実際の規則の見直しに適用する本格的なケースであり、今後のIMOにおけるFSA利用の先導的な事例となるため、我が国として内容の充実した検討結果を提出するとともに、今後、ここで得られた知見に基づき、IMOにおけるFSAの利用方法等について、我が国がリードする方金である。