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図2: 残波岬の50m×50m実験区域。実験開始時のオニヒトデの位置を示す。白抜きの点は除去したオニヒトデ、黒点は標識を付けたオニヒトデを表す。図の上方向がほぼ真北を指す。生サンゴ被度は北側が南側よりも高い傾向があったが各10m×10m区間で量大およそ15%であった.

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(3) 結果

実験開始時のオニヒトデの位置は図2に示される。標識を装着して1日目に、標識をつけた31個体のオニヒトデのうち16個体が再確認され、それらの移動の様子が明らかになった(図3)。残りの15個体は50m×50m枠の外側へ遠く移動して再発見できなかったか、どこかへ潜んでいるか、死亡したか、単純に標議を脱落させたか、あるいはこれらの組み合わせであると思われる。これら16個体の移動距離は直線にして27.6m±5.0SE、移動距離の最大値は70mを上回った。この時、オニヒトデのサイズ(直径)と移動距離との間には特別な関係は認められなかった(Regression ANOVA、F(1,14)=1.27, p>0.05)。また、これら16個体の移動をベクトルとして合計すると(x,y)=(-2.6,-2.2)と非常に大きさの小さなベクトル(3.4m)となった。また、あらたに39個体がこの50mX50m枠の中に加入した。

2日目には前記の16個体のうち7個体が50m枠内と枠外で確認された(図4)。これらの個体の移動距離の平均は15.6m±2.8SEであり、第1日目より移動距離は小さかった(Paired t-test, p<0.05)。これは、標識を付けることが刺激となり、オニヒトデの移動を増大させる傾向がある可能性を示す。また、1日目しか追跡できなかった個体と2日目も追跡できた個体との間で、1日目の移動距離を比較すると前者のほうが有意に大きかった。このことは、移動距離が比較的大きいものほど標識を脱落させる傾向があり、ここで測定された移動距離の平均は実際よりも低く見積もられたものである可能牲を示す。つまり、前者はプラス側のバイアス、後者はマイナス側のバイアスをもたらす可能性があり、しかもどちらの可能性がより高いのかは不明である。

 

 

 

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