両調査においては、手法による違いの他に実施時期に関しても1ヶ月以上も期間があいているため個体数を直接比較することには、無理があると考えられる。しかし今後広範囲にわたるオニヒトデのモニタリングを実施していく際には、各調査地点(例えば今回の概略調査調査地点数である85地点)において詳細な調査を実施する事は、予算上や人員や調査期間といった制限を受けるために困難である。そこで今回実施した慨略調査的な手法を選択せざるを得なくなるのであるが今後に関しては、3名の調査員による10分間の目視観測法自体に対して詳細調査も同時に実施し、有効性を検証する必要があると考えられる。
オニヒトデ個体サイズは、5mの水深において3調査地点間で有意差が生じており(ANOVA, F=4.69, df=2.43, P=0.014)、読谷村残波岬北岸と渡嘉敷村ナガンヌ島北岸との間にみられる(Tukey Test, α=0.05)。この結果に関しては、オニヒトデの餌料となるサンゴの密度は、ナガンヌ島北岸が高いにもかかわらず残波岬北岸に大型の個体が出現しており、残波岬北岸の年級群が上であることが考えられるがその他の環境要因や1998年のサンゴ白化現象以前の状況に関して両地点のサンゴ被度状況に対して資料がないために不明である。
稚オニヒトデの探索に関しては、横地助教授との合同探索における2地点ではそれぞれ13個体、9個体と稚オニヒトデが確認されたがその後、3名の調査員のみによる調査においてはそれぞれ2個体のみの確認となった。もちろん調査地点における違いや調査時期のずれを考慮しなければならないが、どの調査地点においてもオニヒトデ成体は多く確認されており、調査員の探索技術の習熟度によってかなり成果に開きがあると考えられる。この結果から稚オニヒトデの探索による異常発生の予知に関しては、調査員の一定レベルまでの探索技術が要求されると考えられる。また稚オニヒトデの直径については、11月21日のサンプルで3.1〜10.5mm平均7.35mm+0.68、22日で5.0〜11.2mm平均8.43mm±0.64となり、西表島の1986年に調査された月別直径の平均値(横地、1995)の結果と比較すると、9月の平均6.60mmと10月の平均10.60mmとの範囲の間に今回の調査結果が位置する。横地(1995)は、1986年級群を6月の産卵によるものであるとし、9月を3月齢、10月を4月齢としていることから今回の稚オニヒトデ群は、7月から8月にかけての産卵によるものと推察され、Yamazato and Kiyan(1973)の沖縄本島の南部から中西部海域での1970年の産卵盛期6〜7月より約1ヶ月遅い産卵期であったと思われる。また横地(1995)は、オニヒトデの産卵には.水温が大きく関与しているとしていることから、本調査海域における1999年の水温変化を検証する必要性があるが両調査地点共に継続的な水温観測がなされておらず検証には至っていない。オニヒトデの産卵期は、その駆除活動の実施時期とも関係するため今後の経年的な調査が望まれる。