3-2. 詳細調査
1) 調査方法
概略調査を実施した85地点の内、特にオニヒトデ個体群の多く出現した読谷村残波岬北岸、渡嘉敷村ナガンヌ島北岸、渡嘉敷村神山島西岸においてベルトトランゼクトによる詳細調査を実施した。調査は、各調査地点において5m、10mの等深線上に50mの測線を設置し、測線の両側3mずつ(50m×6m=300m2)を観察し、出現するオニヒトデ個体のサイズを測定した。
探索調査は、稚オニヒトデの出現する11月以降に4地点において稚ヒトデの探索を実施した。水深2〜10mの礁縁から礁斜面にかけての窪みや縁溝において稚オニヒトデの餌料であるサンゴモに付いた食痕を手がかりに、その周辺部を探索することにより探索を実施した。なお実施に当たっては、本調査事業の委員会委員である東海大学横地助教授に当初2地点において技術指導を実施していただき、その後の2地点に関しては3名の調査員による1時間の探索を実施した。
2) 調査結果及び考察
表3.2.1及び図3.2.1〜5に3地点におけるオニヒトデ個体群の分布調査結果を示す。読谷村残波岬北岸において49個体(水深5m:28個体、水深10m:21個体)、渡嘉敷村ナガンヌ島北岸15個体(水深5m:15個体、水深10m:0個体)、渡嘉敷村神山島西岸15個体(水深5m:3個体、水深10m:12個体)のオニヒトデが確認された。各地点及び深度毎のオニヒトデ個体における平均直径及び標準誤差は、残波岬水深5mにおいて33.0cm±1.80、同じく水深10mで32.9cm±2.25、ナガンヌ島水深5mにおいて25.4cm±1.09、神山島水深5mにおいて26.5cm±2.78、水深10mにおいて26.5cm±1.89であった。また地点毎の平均直径、標準誤差は、残波岬で33.Ocm±1.40、ナガンヌ島で25.4cm+1.09、神山島で26.5cm±1.57であり、3地点全体では、平均30.3cm±1.01であった。
表3.2.2に稚ヒトデ探索調査結果を示す。沖縄島恩納村海域において13個体(直径3.1〜10.5mm)、渡嘉敷村ナガンヌ島北岸において9個体(直径5.0〜11.2mm)、渡嘉敷村神山島西岸において2個体(直径8.2mm、8.5mm)、読谷村残波岬北岸において2個体(直径8.6mm、8.7mm)、の稚オニヒトデが採捕された。
ベルトトランゼクト法による3地点の密度を、オニヒトデ個体群の異常発生の目安とされる30個体/haと比較するために換算すると、それぞれ読谷村残波岬北岸約813個体/ha、渡嘉敷村ナガンヌ島北岸及び渡嘉敷村神山島西岸約249個体/haとなり異常に高い値となった。前述の概略調査においてはほとんどサンゴ体や底質上に出現している個体のみの計数となったために、サンゴ体の陰や岩陰等に潜在する個体を見逃す可能性があり、各調査地点においてオニヒトデ個体数を過小に評価する可能性があると考えられる。オニヒトデの行動特性に関しても日中において通常の密度においては、サンゴ体の下に隠れているが高密度では昼間でもサンゴを捕食しているとの報告もあり、今回の概略調査のように日中においてオニヒトデ個体がサンゴ体上で確認される状況では、潜在する個体がかなり多く生息している可能性が考えられる。そこで今回調査を実施した地点の結果を概略調査時における結果と比較すると、以下の表となる。