また、オニヒトデを資源として利用する方法を見つけ出そうという試みもなされてきた(辰喜 1973、宮脇 1978)。しかし、山口(1986)は、駆除の対象としてめオニヒトデを原料にして製品を作ろうという試みは、材料の安定供給が原理的に不可能なため、実現可能性が低いのではないかと論じた。
駆除の前に密度を把握し、有効な駆除方法を検討し選択する必要がある。さらに、駆除後に駆除の効果を評価する必要がある。これは、駆除の目的が、オニヒトデを漁獲することではなく、駆除後のオニヒトデ密度を許容レベル以下に抑えることにあるからである。これまでに、以下のような方法が採られてきた。また、非研究者から提供される情報の活用も試みられている(Engelhardt et al. 1997)。
c. 一定時間の遊泳で目に付いたオニヒトデをカウントし相対密度を求める(Pearson & Endean 1969*, Campbell & Ormond 1970, Pearson 1972, Wass 1973, 環境庁1973, 1974, Nishihira & Yamaszato 1974*など)。一般にオニヒトデは夜行性とされ、昼間はサンゴの影や岩の窪みに隠れているが、夜間はサンゴ礁の表面に出てきてサンゴを食害する(環境庁1973)。しかし、これはオニヒトデの分布密度が比較的低いときの行動パターンであり、高密度になると昼の間でもサンゴ礁の表面で摂餌行動を行う(Pearson & Endean 1969*, Nishihira & Yamazato 1972*)。とはいえ、すべての個体が観察可能というわけではない。
d. ライントランセクト(Nishihira & Yamazato 1972*, Soegiarto 1973, 環境庁1973, 1974)。
e. 食痕のカウント(Chesher 1969, Ormond & Campbell 1974*)。サンゴはオニヒトデに食害されると真っ白な骨格が食痕として残る。この食痕は何日か経過すると藻類が付着し、一ケ月ほどで淡い緑色、さらに濃い緑あるいは褐色になる。そのため、新鮮で真っ白な食痕はその近辺にオニヒトデがいることを示しているChesher 1969, Endean 1974*)。
f. マンタ(Endean 1974*, Kenchington 1976, Nash & Zell 1982*, De'ath 1992, Fernandes 1990, Fernandes, Marsh, Moran & Sinclair 1990, Eng1ish, Wilkinson & Baker 1997, 海中公園センター1994)。小型ボートにゆっくりと曳航された観察者(スノーケラー)が一定距離(あるいは時間)毎に、見かけたオニヒトデの個体数などを記録する。
g. また、簡便な方法としては、スポット調査(Pearson & Garrett 1976)―任意の場所で潜水し、視野の中に存在するオニヒトデの数を記録する。