具体的な駆除法
これまで採用されてきた駆除方法には、個々のオニヒトデを対象とするものと集団を対象としたものに分けることがきる。
個々のヒトデを対象とするのでは、薬品の注射、陸上に取上げる方式、1/2あるいは1/4に体躯を切断、体躯に空気を注入して浮上させ回収する方法などがあった。これらの方法は、その有効性とコストが比較検討されてきた(Zann & Weaver 1988, バークランド 1989、Johnson, Moran and Driml 1990, Lassig 1995, Fisk & Power 1999)。
沖縄では1970年から1983年の間、6億円を投入して1300万匹のオニヒトデを駆除した。当初はGBRのGreen Islandでもオニヒトデを切り刻む方法を採用した。しかし、この方法は、切断された断片が再生し最終的には個体数が増大してしまうのではないかという危倶からこの方法は使われなくなり、主要な方法はオニヒトデを採取し陸上に埋める方法が主になった。
しかし、陸上取上げ方法は非常に労働集約的で非効率なため(Endean 1969*)、その他の方法が試された。それらのうちの多くは、さまざまな薬品を注射するものであった。100%ホルマリン、10%酢酸、90%ホルマリン、18%水酸化アンモニウムやアンモニアなどである。Kenchington and Pearson(1982*)は、3種類の駆除方法を比較した。取上げ方法、庄縮空気を注入して採補する方法および硫酸銅の注射である。硫酸銅の注射がもっとも効率が良く、ダイバー一人あたり一時間に132匹が駆除された。
一方、集団を対象としたものには、生石灰をサンゴ礁に散布する方法(Endean 1969*)、チューブに硫酸銅を含んだゲルをいれ海水に浸出させる方法(Walsh et al. 1975*)などが試みられたが結果は芳しくなかった。
また、オニヒトデの天敵として知られるホラガイによる捕食やオニヒトデの特異的な病原体による生物防御が提案されたが、その効果が疑問視されており、技術的にも実現可能性はまだない。
海中公園センター(1984)は、八重山で有効な駆除方法を検討した。駆除の目的を許容密度以下にオニヒトデ密度を下げることとした。許容密度に関しては、オニヒトデが均一に分布していることを想定しているため、まず、分布を均一化させる必要がある。そうしないと、許容レベル以下の密度でも、局所的に食害が起こるからである。駆除対象地域において産卵期以前に3回の駆除を行う。第1回目は対象地域を小区画に分割し、それぞれの小区画毎に駆除する。これにより、オニヒトデの密度分布を把握する。第2回目の駆除は、第1回目の駆除で高密度と判断された区画で行う。このことで、おそらく駆除し残しが多かったであろう高密度域の密度を低下させることができよう。この過程で、密度の均一化という目的の達成度を判断する。第3回目の駆除は、第2回目の駆除結果に基づいて、密度の均一化を図る。
海中公園センター(1984)は、対象区域の面積を1?2と見積り、10人のチームを作るとし、一人が4m幅で駆除していくとすると、担当する距離は25kmとなる。1時間500m処理できるとして50時間かかる。1日5時間稼動するとして10日間を要し、これを3回繰り返すと約一ヶ月かかるとした。一方、オニヒトデ一個体当たり2.4mlの薬品を注射するとして、1m2あたり1個体の密度で分布するとして、水深が10mとすれば、4000万分の1に希釈される。