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これらのうち、オニヒトデの個体群密度に影響を及ぼすほどの捕食が期待できるのはホラガイとフリソデエビであろう(海中公園センター1984)。ホラガイについては、通常低密度で分布する種であるため、オニヒトデ個体群に栄養を与えるほどの密度にするためには稚貝の大量放流が必要となろう。しかし、現在のところ、ホラガイのペリジャー幼生期が長く、飼育下ではその間に原生動物による感染により着底可能な段階にまで飼育することとが困難である(海中公園センター1984)。サンゴ礁でのオニヒトデの稚ヒトデや成体の捕食圧について多くはまだ不明である(Seatman 1995)。

一方、オニヒトデの卵や幼生は、サポニンを含有するために多くの濾過食者やブランクトン食者に忌避されることがしられているが、この分野ではまだ不明な点が多い(Birkeland & Lucas 1990)。

 

7] 環境耐性

浮遊幼生、サンゴモ食期や成体に関し、塩分や水温条件については良く研究されている(Henderson & Lucas 1971, Yamaguchi 1973, Lucas 1973, Yamaguchi 1974, Lncas 1984)。しかし、これらの要因のうち、サンゴ礁におけるオニヒトデの分布を決定していると推定されるものはない。

 

(6) オニヒトデの大量発生に関する仮説

オニヒトデの大量発生については過去に数多くの仮説が提唱されてきた。仮説は大きく分けて2通りある。ひとつは、オニヒトデは特に大量発生しているわけではなく、その行動特性が変化して、サンゴ礁上で目に付きやすくなるというもの。もうひとつは、何らかの要因で、オニヒトデの生存率が高まった結果大量発生するというものである。以下、Birkeland and Lucas(1990)に沿って概説する。

 

a. オニヒトデは増えいるのではなく集合しているだけだという説(集合説)(Dana, Newman and Fager 1972)

これは、以前からサンゴ礁で高密度で分布しているが、その行動様式のために人目につきにくい。それが、台風などでサンゴがある程度死滅すると、オニヒトデは餌を求めて生き残ったサンゴ群集に集中するというもの。これは、オニヒトデは増殖したのではなく、ただ行動様式を変化させて集合した結果、人目につくようになったというもの。しかし、この説では、過去に報告されたような、平常時の何万倍、何百万倍の個体群密度の上昇を説明するには無理がある。

 

次に、オニヒトデの個体群密度が上昇したとする説には大きく分けて以下のふたつのものがある。

 

 

 

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