医療の現場に立とうとしている者として、倫理感、責任感、そして患者さんやそのご家族の方の思い、まだまだ未熟ではあるが、考える機会を頂いた。
これは私事であるが、私は解剖実習の始まる前に親しい人を病気のため亡くした。ご遺体に初めて向かった時、その時の身内としての思いと医学生として勉強のためにご遺体に向かう思いと入り混ざり、複雑な気持ちになることもあった。その時のことを思うと、ますます患者さんやそのご家族の思いについて考えた。もし私がその立場であったのならば、もし私の家族がそのような立場であったのならば、私はどうするであろう、どうして欲しいであろう、常に自分自身に問いかけた。
医の倫理、生命の尊厳が問われる今日、常に忘れてはならないのは生命への畏敬の念であると思う。今までもそう考えてきたが、解剖実習を通して、さらにその思いは深まった。生と死、その現場に立とうとしている者として、生涯考え続けていかなければならない命題である。人のための良き医療を実践するためにも考え続けなければならない。これから先、いつの時であっても、この思いを胸に留めておきたい。
最後に、医学のために、医学教育のために献体して下さった方に、貴重な実習の場を与えて下さった全ての方々に感謝致します。